ラジオ番組 マイあさ! 「物価高の真相」(NHK) を聞いて
2025年7月31日に放送されたラジオ番組 マイあさ! マイ!Biz 「物価高の真相」(NHK) を聞きました。

この番組では、現在の日本における物価上昇(インフレ)の背景と課題について、多角的に分析していました。
コロナ禍で物流・生産がストップし、モノの供給が追いつかず価格が上昇した。
ロシアのウクライナ侵攻により原油・穀物などの価格が世界的に高騰した。
世界規模で人口増加による慢性的な需要超過が生じ、エネルギーや食料が足りず、価格がじわじわ上がっている。
これらの要因はすべて「海外からの外的ショック」によってもたらされたもので、日本だけで解決できる問題ではないという現実が強調されていました。
日銀の大規模金融緩和の継続により長らく金利を低く抑えていたため、円が売られやすくなり円安が進行し、輸入価格の上昇するので、物価全体は押し上げられた。
急な金利引き上げは、住宅ローン・企業経営・国家財政に深刻な悪影響を及ぼす上、結果として、引き締めには慎重にならざるを得ないという構造的ジレンマがある。
日本の最大の問題は、「物価が上がっても賃金が上がらないこと」。
昭和の高度成長期とは違い、企業の生産性向上が停滞している。
生産性が上がらないまま賃上げを強行すると、企業負担が大きくなり雇用にも悪影響がある。
本質的な解決は、企業の経営改善・構造改革によって賃金を上げること。
これは「数年単位」での取り組みが必要である。
その間は、物価上昇の勢いを抑えつつ、国民の生活を守るための巧妙な政策運営が求められている。

この番組は、短期的な視点にとどまらず、物価上昇と賃金の関係、そしてそれに伴う政策の限界と必要性を、丁寧に紐解いていました。
特に印象的だったのは、以下の2点です。
第一に、よくある「もっと給料を上げればいいじゃないか」という声に対し、「企業の生産性向上なくして賃上げなし」と明確に説明していたのは説得力がありました。
これは国民一人ひとりが理解しておくべき現実です。
第二に、金利を上げればインフレは収まるかもしれないが、同時に住宅ローンや国の借金の利払いなどに大きな影響が出る。
政策は単なる「ボタン一つで済む操作」ではなく、国全体のバランスを取りながら進める極めて繊細な作業であることがよく伝わってきました。
このような構造的な課題を乗り越えるためには、政策の整合性と、国民の理解・協力が不可欠です。
短期の対症療法ではなく、長期的な視点で腰を据えた議論と実行が求められていると強く感じました。