マイあさ! 「公共インフラの老朽化 どう対応するか」を聞いて

2025年7月29日に放送された ラジオ番組 マイあさ! 「公共インフラの老朽化 どう対応するか」(NHK)を聞きました。

この放送を聞いて、まず感じたのは、「見えないインフラの危機」がいかに軽視されがちか、ということです。

私たちは道路や橋の老朽化には目を向けるのに、水道のような地下にあるインフラは壊れて初めて問題が意識される傾向があります。

全国の水道管総延長は約74万km。そのうち約7万kmが法定耐用年数(40年)を超えているという事実は、放置できないレベルのインフラ劣化を示しています。

「安定しているように見えるが、実はすでに危機が進行している」──この構造は、まさに日本社会全体が抱える縮図のようです。

補修や更新の遅れの主因は、「財政難」「人手不足」「専門性の欠如」ということです。

水道事業が経営感覚に欠けているとの指摘もありました。

たとえば、減価償却を料金に反映させていない、水道料金に将来の更新費用を組み込んでいないといった指摘は、企業経営と行政運営の違いを越えて、住民の生活を守る仕組みとして再構築する必要性を示しています。

専門職ではない職員が水道事業を兼任しているケースが多く、「専門性の欠如」が構造的に存在しています。

これにより、「経営感覚」や「将来を見据えた戦略的投資」がなされにくくなっているのです。

国は、耐震化や老朽化対応のための財政支援や、専門性・経営感覚を磨く研修を実施すべきであるという提言はまさに的を射たものである。

興味深いのは、ある地域で導入されている「フューチャーデザイン」の紹介です。

これは、50年後の住民の視点から今の政策を評価し、現在の意思決定に反映させようとする取り組みです。

「今、きちんと維持管理をしておけば、将来の住民が困らない」と考える視点を、実際の政策決定に導入することは、公共政策に倫理と想像力を持ち込む試みといえます。

将来世代の立場で考えるという視点は、単なるインフラ更新にとどまらず、教育、福祉、財政再建などの分野にも応用可能な新しい思考法だと感じました。

一方で、財政や人材の不足という現実的なハードルを乗り越えるには、単なる理念だけではなく、政治的なリーダーシップや住民の理解・協力が不可欠です。

「水道料金を値上げしてでも安全性を確保してほしい」という将来の声を、今の私たちが代弁する必要があるのかもしれません。

そのツケを次の世代に残さないためにも、今、私たちが何を決断し、どこにお金と人を投入するのか。

これは単なる水道の話ではなく、日本社会全体の持続可能性を問う、根本的な問いでもあるのです。