ラジオ番組 ふんわり「子どもの体験格差解消プロジェクト」(NHK)を聞いて

2025年7月25日に放送されたラジオ番組 ふんわり「子どもの体験格差解消プロジェクト」(NHK)を聞きました。

この番組では、安部敏樹さんの語りを通じて、子どもの体験が「非認知能力」(やる気、協調性、忍耐力など)を育む土台であり、その力が将来の進学・就職・人間関係形成に大きく関与していることが明確に示されていました。

文科省も推奨している「子どもの体験活動」ですが、現実には「地域のスポーツチームの減少」「経済的格差による体験機会の偏在」「部活動の地域移行に対応できる受け皿の不足」などにより、体験の場は狭まりつつあります。

かつては「数理能力」や「記憶力」が重視されましたが、今では「コミュニケーション力」や「主体性」が成功の鍵に変わってきています。

入試制度も変化し、AOや推薦型入試では、「どんな体験をし、そこから何を学んだか」が問われます。

子どもたちの未来は、知識量だけでなく、どれだけ多様な世界に触れ、それを自分の言葉で語れるかにかかっています。

社会が複雑化する今、自ら選び、感じ、表現する力が求められています。

その力を養う「体験」を、経済的・地域的な事情にかかわらず、すべての子どもに保障するために、家庭・学校・行政・民間の垣根を越えた連携が不可欠だと強く感じました。

安部氏は、体験を「嗜好品」ではなく、「教育」であると定義しました。

ここに本質があります。

体験は余裕のある家庭だけが享受すべき“贅沢”ではなく、すべての子どもに保障されるべき“必須の機会”なのです。

体験は家庭・学校・地域・民間のいずれが担うべきか?という問いに対し、「すべてが関わり得る」という柔軟な発想が必要です。

特に大事なことは「百の体験より、一つの気づき」ということです。体験の“量”よりも“質”と“気づき”が大切です。

小さなきっかけ(映画の予告を見る、一緒に料理を作る)からでも体験は始められる。

信頼できる他人(親以外の大人)との関わりを通して、子どもは社会性や挑戦する力を育みます。

とりわけ、「親が楽しそうに料理している姿を見るだけで、子どもは体験したくなる」という話は、教育における“背中で教える”という古くからの知恵にも通じ、温かみを感じました。

体験とは、何も大げさなアクティビティばかりではなく、日常の中のふとしたきっかけでもあるのだと、改めて教えられる内容でした。