ラジオ深夜便 ▽明日へのことば「川が教えてくれたこと~俳優・中本賢 川を語る」を聞いて 

2025年7月22日に放送されたラジオ深夜便  明日へのことば「川が教えてくれたこと~俳優・中本賢 川を語る」を聞きました。

中本賢さんが1985年に川崎へ引っ越したことで、多摩川との関わりが始まりました。

当時の多摩川は高度経済成長期の公害の象徴とも言えるほど汚染されており、洗剤の泡や瓦礫、ゴミが散乱し、魚の奇形まで見られる状況でした。

この描写から、1980年代前半の都市部の河川環境の悪化がリアルに伝わってきます。

しかし、1990年代に入ると下水道普及率が8割に達し、川底がヘドロから石に変わり、虫やハゼ、アユといった生物が戻ってきたことは、インフラ整備と自然回復の因果関係を実証する貴重な記録です。

特に、中本さんが「下水道普及率と魚の種類・数がリンクする」と述べている点は、行政施策の効果が環境に具体的に現れることをデータで裏付けた重要な証言といえます。

中本さんは川の環境改善を見守るだけでなく、20年前から子供たちに川を知ってもらうための授業を始めています。

教育委員会から活動の一部が制止される中でも、床屋での「チョキチョキライブ」という独自の試みを行い、地域の母親たちや先生を巻き込んで活動を広げたことは、 草の根的な環境教育の実践例 として非常に興味深いです。

社会の壁を突破するには、熱意と創造性が必要であることを示しています。

と同時に、多摩川の回復は行政の努力だけでなく、市民の情熱と地道な観察によって支えられたことがわかります。

「子供は言葉ではなく状態を見ている。本気かどうかを感じ取る」という指摘は、教育や子育てにおいて非常に重要な視点です。

これは単なる環境教育にとどまらず、人間関係やコミュニケーションの本質に迫る洞察です。

言葉の説得力は表情や態度、真剣さといった「非言語的要素」に支えられているという彼の経験は、多摩川を通じて得られた“人間力”の証といえるでしょう。

最後の「人の成長が喜びとなる瞬間は、これほど豊かな時間はない」という言葉は、中本さんが川を介して人と人、自然と人をつなぐ中で得た深い充足感を表しています。

単なる環境保護活動にとどまらず、 自然を通じた人間の精神的成長 を感じているのが特徴です。