マイあさ! けさの“聞きたい” 「高校生たちの哲学カフェ」を聞いて
2025年7月18日に放送されたラジオ番組 マイあさ! けさの“聞きたい” 「高校生たちの哲学カフェ」を聞きました。

この番組は、現代の若者たちが「考えること」と「対話すること」の意味をどのように捉え、実践しているかを紹介する非常に興味深い内容でした。
全国で100か所以上開催されているという背景からも、哲学カフェは一過性のイベントではなく、社会的な意味を帯びた「思考の場」として根付いてきていることが分かります。
特に高校生を対象にしている点に注目すべきで、これは従来「知識の受け手」とされがちな若者が、「主体的に考え、表現する」ことを学ぶ貴重な機会となっています。
発言の強制がなく、「否定しない」「意見を受け止める」といったルールは、まさに「心理的安全性」の確保です。
これは学校の授業で見られる「正解・不正解」の構造とは対照的で、生徒たちは自分の思考を試し、発展させる自由を得ています。
「発言しない子も関わっている」という観察は、非言語的コミュニケーションの力を示しており、「場に参加している」という感覚が、全体の創造的な思考を促進している点が印象的です。
「触る」と「触れる」の違いをテーマにする発想がユニークです。
日常語の中にある微妙なニュアンスを丁寧に掘り下げるという、まさに哲学的営みです。
今回の高校生たちのやりとりからは、言葉の「強度」や「距離感」への繊細な感受性も感じられました。
たとえば、「触る」と「触れる」に込められた温かさや愛情の違いを丁寧に言語化する姿勢は、非常に成熟した哲学的感性の表れです。

進行役の存在も重要で、「対立ではなく歩み寄り」「第三の視点の提示」など、ディベートとは異なる協調的・共創的な対話の枠組みが整っていることが、哲学カフェの質を支えています。
哲学カフェがもたらす最大の価値は、「問いを持つことの豊かさ」と「他者と共に考えることの楽しさ」を、参加者たちが実体験できる点にあります。
学校では「正しい答え」を出すことに重きが置かれがちですが、哲学カフェでは「問い続けること」や「他者の意見に触れることで自分の考えが深まるプロセス」こそが評価されます。
このような場があることで、若者たちは思考力だけでなく、共感力や柔軟性、対話的スキルを自然と養うことができます。
現代社会ではSNSによる即時的・断片的なやり取りが主流ですが、こうした「熟考と対話」の場があることで、他者と真に向き合う力を取り戻すことができるのではないかと思います。