マイあさ! マイ!Biz「気候変動が経済に与える影響」を聞いて
2025年7月18日に放送されたラジオ番組 マイあさ! マイ!Biz「気候変動が経済に与える影響」斎藤幸平 を聞きました。

この番組では、経済思想家・斎藤幸平氏のコメントを交えながら、気候変動がもたらす具体的な経済・社会への影響を、多面的に描き出しています。
番組では、フランスやスペインなどで40度を超える異常な暑さが日常化し、死者も続出しているというヨーロッパの現状が語られました。
斎藤氏は、これをもはや「未来の話」ではなく、「現在の現実」として捉えるべきだと示唆しています。
さらに、原子力発電所の停止や学校の休校といった日常生活への直接的な影響が示され、気候変動が「環境問題」ではなく「経済問題」であり「生活インフラ問題」であることが浮き彫りになります。
ここで印象的なのは、気候変動が抽象的な脅威ではなく、生活のあらゆる面を揺るがす現実的な脅威として迫っているということです。
猛暑による死者やエネルギー供給の停滞は、もはや局地的な出来事ではなく、先進国でも起こり得る「構造的リスク」になっています。
ドイツではエアコンの普及率がわずか3%であり、気候変動への適応が進んでいない現実が紹介されます。
その一方で、エリート層が快適な室内環境にいながら、「景観保護」を理由に庶民のエアコン設置を抑制しようとする構図が、深刻な社会的分断を生んでいます。
この構図は「環境と格差」という新しい対立軸を生み出しており、単に気候変動への対応が技術や制度の問題にとどまらず、「誰が犠牲を負うのか?」という倫理的・政治的な問題であることを示しています。

これは非常に重要な視点です。
気候変動は「みんなの問題」と言われますが、その「負担」は平等に分かち合われていない。
むしろ、生活の苦しい層ほど、最も過酷な環境にさらされる。ここには、持続可能性と社会的公正の両立という困難な課題が存在します。
気温上昇による農業不振やインフラへの打撃、GDPの減少予測(10%)、インフレ、そして格差拡大など、斎藤氏は気候変動がマクロ経済にもたらす打撃を強調しています。
また、日本の気温上昇(6月は平年より2.3℃高い)も例外ではなく、米の不作、鉄道・道路などインフラへの悪影響も懸念されています。
これにより、気候変動は「環境問題の一分野」ではなく、「経済構造の転換」を求める問題であることがはっきりします。
つまり、ただCO₂を減らすだけではなく、「どのような社会・経済のあり方を目指すのか?」というビジョンとセットでなければ、根本的な解決には至らない。
私たち一人ひとりの生活も、すでにこの変化の中にあります。
そのなかで、政治・経済・生活様式の「持続可能性と公平性」の両立という、きわめて難しい課題にどう立ち向かうかが問われていると強く感じさせられました。