「ともだちがほしかったこいぬ」 国際的アーティスト、奈良美智がおくる待望の絵本
『ともだちがほしかったこいぬ』は、奈良美智の絵と世界観が凝縮された、やさしく、切なく、そして希望に満ちた絵本です。
タイトルの「ともだちがほしかったこいぬ」は、読者の心に直接語りかけるような素朴で率直な言葉です。
物語の中心は、寂しさを抱えた「こいぬ」と「おんなのこ」の出会いと交流。
孤独という普遍的な感情がテーマですが、そこに「誰かと出会いたい」「つながりたい」という希望が込められています。
奈良美智の作品に通底するのは、社会の片隅にいる存在や声なき者たちへのまなざしです。
この絵本の「こいぬ」や「おんなのこ」もまた、他者との関係を模索しながら、自分自身の居場所を見つけようとします。
赤い鼻の「こいぬ」や、好奇心に満ちた「おんなのこ」の姿は、どこか不器用で無防備。
しかしその姿こそ、読者の感情移入を誘います。
線は単純でも、目や表情のわずかな違いで「孤独」や「希望」が伝わってくる。
これは奈良美智ならではの表現力です。
ページをめくるごとに、絵が語る物語が心にしみてきます。言葉が少ない分、余白にある「感じる力」が読者に委ねられています。
「きみが もしも ひとりぼっちで
とても さびしくても
きっと どこかでだれかが
きみとであうのを まってるよ
だいじなのは さがすきもち!」(本文より)
この言葉には、大人も子どもも心を動かされる普遍的な優しさがあります。
「さがすきもち」というフレーズは、待つだけではなく、自ら動こうとする意思の大切さをやさしく伝えています。
この絵本は、まさに「奈良美智の原点」といえるような、感情の芯を突く作品です。
そこに描かれているのは「誰かとつながる勇気」「ひとりじゃないという希望」といった、大切な人生の真理です。
奈良美智の絵が好きな人にはもちろん、日々の生活のなかで孤独を感じている人、なかなか自分を出せない人、そんな全ての「小さな心の叫び」を抱える人に、この絵本はそっと寄り添ってくれるでしょう。