ふんわり 「いほこの引き出し」新感覚の山歩き!  (フラット登山) を聞いて

2025年6月27日に放送されたラジオ番組 ふんわり 「いほこの引き出し」新感覚の山歩き!  (フラット登山) を聞きました。

この番組は、「登山=山頂を目指すもの」という固定観念から自由になる、新しい「山歩き」の楽しみ方を提案しています。

それは「フラット登山」と呼ばれ、自然を“征服”するのではなく、五感を解き放ち、「今ここ」を楽しむ身体的な喜びにフォーカスした体験です。

番組の根幹にあるのは、「山登りは山頂に到達することが目的である」という従来の価値観からの解放です。

「気持ちのいい森のとこだけ歩いて帰る」「湖のほとりを一周」「川べりを上流へ」という試みは、「達成」よりも「過程」を重視する哲学的な転換を感じさせます。

これは近年のマインドフルネスやスローライフの価値観にも共通しています。

「落ち葉が積もって道がふわふわ」「異世界に迷い込んだような樹海」など、視覚だけでなく、足裏や空気感、音といった身体全体で自然を味わう表現が豊富です。

「日頃、頭で物を考えすぎる。体の喜びをもっと感じた方がいい」という言葉には、現代人が置き去りにしがちな身体性の回復への願いが込められています。

自然の中で“体が気持ちいい”と感じることそのものが目的であって良いという提案です。

たとえば「戸隠神社の私有林」「千年前から変わらない姿」など、文化と自然の共存の記述があります。

これは「自然=開発すべき資源」ではなく、「共にある存在」としての感覚を思い起こさせます。

また、「富士山五合目から下る」など、あえて下山するという行為に「退却」「引き返し」ではなく、変化や流れを味わう美しさを見出しているのも印象的です。

「都市部の公園を歩いてもいい」「舗装された道でもいい」と述べられており、登山のハードルを下げるだけでなく、「自然とのふれあい」は山深い場所だけにあるのではない、というメッセージが込められています。

この「フラット登山」という発想には、現代における“幸福観”や“達成観”の変化が反映されていると感じました。

何かを「達成」するために無理をするのではなく、いまの自分にとって心地よい体験を選び取る。

これは自然と付き合う方法であると同時に、人生の姿勢にも通じるものです。

また、自然を「目で見るもの」ではなく「身体で味わうもの」として捉える視点が非常に新鮮でした。

特に「落ち葉でふわふわした道」「ジブリのような樹海」などの感覚描写は、自然の中でこそ体験できる“日常からの逸脱”を象徴しています。

現代人にとって、こうした“軽やかな山歩き”は、自然との付き合い方だけでなく、自分との付き合い方を見直す良いきっかけになるのではないでしょうか。