ラジオ番組 マイあさ!「ストレスとうまく付き合う」を聞いて
2025年5月16日に放送されたラジオ番組 マイあさ!「ストレスとうまく付き合う」(放送局:NHK)を聞いた。
このラジオ番組の感想として、まず強く感じたのは、「ストレスは我慢すべきものではなく、“気づいて手当てすべきもの”だ」というメッセージが、非常にリアルな体験とともに丁寧に語られていたという点です。
語り手が適応障害を経験し、自分の心と正面から向き合ってきた姿勢には、多くの人が共感し、励まされるのではないでしょうか。
特に印象的だったのは、「ストレスに付箋を貼る」という表現です。
これは、漠然とした不調を無視せず、名前を与えて意識化することの重要性を示しています。
見えない心の痛みは、可視化しなければ無いものとして扱われがちです。
しかし、ほんの小さな違和感でも「ここにある」と気づくことで、対処の糸口が見えてくるのです。
「青・黄・赤」という段階的な色分けは、抽象的で捉えにくい“心の状態”を視覚的かつ直感的に把握できる方法です。
これは信号機のように、
青:平穏・元気な状態、
黄:注意が必要な違和感の兆し、
赤:危険・ストレス過多な状態
という「心のトラフィック・シグナル」のように機能し、自分にとっての心理的変化を早くキャッチできます。
色ごとに具体的な行動パターンや状態を書き出しておくことで、何が自分にとって回復に繋がるかが明確になります。
これは「自分の取り扱い説明書」を作るようなもので、ストレスを感じたときに“どうしていいかわからない”という無力感を減らす効果があります。
さらに、自分の心の状態に合った対応ができた経験は、「対処できた」という実感、「自分を理解できている」という安心感を生み、自己肯定感を高めます。
心が元気なうちに準備しておくということは、転倒してからではなく、転ばないように杖を持っておくという発想に近く、回復までの時間を短縮し、悪化を防ぐ効果があります。
さらに、「感情を緩ませる」というアプローチも深く共感できました。
問題が解決できない時に、気分を少しでも軽くすることで、思考の柔軟性が戻り、新しいアイデアや解決策にたどり着けるという考えは、まさに実生活で役立つ知恵です。
「感情と問題は必ずしも同時に扱わなくてよい」という認知的柔軟性の表れです。
解決できない問題に直面したとき、「気持ちの落ち込み」をそのままにして悩み続けるのではなく、まずは「自分の気分を上向きにする」ことに集中する。
その結果、「思考の硬直」がほぐれ、後からでも建設的な視点に立ち戻ることができる――これはレジリエンス(精神的回復力)を育てる鍵となります。
これもまた、「気分」と「問題」を分離して扱う力、つまり感情調整の知恵です。
最後に、語り手が「自分にオッケーを出せるようになった」と話していた部分は、ストレスとの付き合い方が「自己受容」へとつながっていく過程を示しており、心の回復とは何かを考えさせられました。
この番組が単なるストレス対処法にとどまらず、「生き方の回復」へと踏み込んでいる最も重要な点です。
ストレスに対する対処法を学び、自分の弱さや限界を見つめた末に、「それでもいい」と言えるようになる。
この過程は、「自分への思いやり」や「条件なき自己肯定」へとつながるものです。
「心の痛みに対して、自分が自分の味方になる」という態度は、医療的支援と同じくらい回復に力を与えます。
この番組は、ストレスに悩む人にとって、「気づき」「備え」「視点の転換」「自己承認」という具体的かつ優しいヒントが詰まった、非常に価値あるものだと思います。