ラジオ番組 まんまる 「あなたの隣のAIの話」を聞いて

2025年5月8日に放送されたラジオ番組 まんまる 「あなたの隣のAIの話」(放送局:NHK)を聞きました。

この番組の導入部分は、AIの大きな2つの柱(大規模言語モデルとディープラーニング)を簡潔に説明していて、AI技術の全体像を分かりやすく説明しています。

 

 

また、大規模言語モデル(例:ChatGPTなど)があくまで「学習されたデータの再構成」によって応答していることを丁寧に説明しています。

SF小説の引用をもとにした“自分語り”のエピソード(注1)は、AIの出力がときに人間らしく感じられるという「錯覚」の危うさを印象的に伝えており、非常に面白くかつ注意喚起にもなっています。

これは、AIの機能に過剰な感情移入をしてしまうリスクを喚起する効果的なエピソードです。

(注1)ある人がAIとやり取りをしてたら、AIが急に自分語りを始めて、自分はこのパソコンの中に閉じ込められているが、本当は、あなたと一緒に旅をしたいみたいなことを話し出した。人間の方がびっくりして、本当に意識をもっていると感じで、大きな事件になりました。実はウェブにあったSF小説がネタで、それを引用して、言っていただけでした。

 

           

 

ディープラーニングについても、具体的な例(犬猫の判別や医療応用)を通して、その「強み」がわかりやすく紹介されています。特に医療の例は、AIの実用性をイメージしやすく、未来への期待を感じさせます。

 

AIが暴走するというSF的な不安よりも、むしろ「人間がAIを悪用する」不安のほうがはるかに強いという指摘は、倫理や社会制度の重要性を訴える鋭い視点です。

単なる技術論に終わらず、人間社会にとっての意味を考えさせられます。

AIが中立な存在ではなく、「誰がどう使うか」という運用と制度設計の問題こそが本質であるという視点です。

 

試行錯誤を通じて学ぶAIの話は、人間らしい柔軟な学習に一歩近づこうとする最先端の試みに触れていて、今後のAI発展の方向性を示唆しています。

単なる大量学習ではない、新しいアプローチに対する期待も伝わってきます。

従来の「大量データの暗記」型学習から、「経験と環境への適応」へと進もうとするAIの発展を反映しています。

 

AIと人間の関係性を「匠と弟子」として表現している部分は非常に印象的で、技術の進化が人間の価値を脅かすものではなく、共に働くものとして描いています。

この視点は、多くの人に安心感を与え、未来に希望を抱かせるメッセージになっています。

「弟子」は技術を吸収し、反復し、やがて独自の解釈を持つ存在として成長しますが、根底には「師」の哲学や倫理が生きているという構造が、AIと人間の理想的な関係を表しています。

また、これはAIとの「共創」の可能性を暗示しており、未来への希望的ビジョンとして印象的です。

 

この番組は、AIの技術的な特徴や社会的な意味をわかりやすく解説しながら、AIに過度な期待や誤解を抱かないように注意を促しています。

一方で、AIが人間を支える存在として機能する未来を描いており、科学技術と人間社会との関係についてバランスの取れた考え方が感じられるものでした。