ラジオ番組 マイあさ「ストレスに対処する方法」を聞いて

2025年2月12日に放送されたラジオ番組 マイあさ!「ストレスに対処する方法」(放送局:NHK)を聞きました。

この番組は、現代社会で多くの人が直面している「ストレス」への対処法について、非常に実践的かつやさしく整理された内容であり、深い共感を呼ぶものです。

1. 「強さ」よりも「しなやかさ」への視点の転換

「強いメンタルではなく、しなやかな心が大切」という番組の主張は、近年のメンタルヘルスの国際的な潮流とも一致しています。

かつては「折れない鋼の心」が理想とされてきましたが、今では「レジリエンス(回復力)」や「柔軟性」がより重視されています。

特に日本社会では、「我慢=美徳」「弱音=甘え」という固定観念が根強い傾向があるため、「折れても戻れる」ことに価値を見出すこのメッセージは、従来の“自己犠牲的な強さ”へのアンチテーゼでもあり、文化的にも意義深い転換を促します。

 

 

2. 五つのポイントが具体的でわかりやすい

それぞれのポイントが明確であり、誰にでも実行可能な形で紹介されている点が好印象です。

①気づくことは、すべてのスタート。自分のストレスに鈍感になってしまっている現代人にとって、大切なリマインダーです。

②問題の棚上げや逃げも「選択肢」とする柔軟さは、従来の「逃げてはいけない」という考え方に対する健全なアンチテーゼで、気持ちを楽にしてくれます。

問題に向き合うには、心や体にある程度の余裕が必要です。

心身が疲れきっているときに、無理に問題を解決しようとすると、判断ミスや感情の爆発を招いたり、かえって悪化することがあります。

そういうときに「いったん保留する」「その場を離れる」というのは、回復のための“賢い選択”です。

日本では、「逃げるな」「逃げるのは恥」といった価値観が根強くありますが、実際には、「逃げることで守れる自分」や「距離を取ることで見えてくる本質」もあります。

たとえば、人間関係においても、距離を取ることで冷静になり、新たな解決策が見えてくることがあります。

柔軟さとは、「必ずこうでなければ」という思いを手放し、「今の自分にできることは何か」を冷静に選ぶ力のことです。

「逃げてもいい」「保留でもいい」という選択肢を自分に許せる人ほど、結果的に長く健康に生きられるとも言われています。

③考え方の見直しでは、「自分の解釈が自分を苦しめる」ことに気づかせてくれ、自分自身との付き合い方にヒントを与えてくれます。

「自分の解釈が自分を苦しめる」というのは、認知行動療法(CBT)の中核的な考え方です。

出来事そのものではなく、それにどう意味づけるかがストレスの大きさを決めるという点に気づかせてくれる内容です。

④ストレス発散の例も、身近な方法ばかりで実行に移しやすく、ストレスマネジメントを「特別なこと」にせず、日常の中に取り込む工夫を促しています。

 

 

⑤相談することでは、頼っていい相手の例が具体的で、相談のハードルを下げてくれます。

とくに「厚労省の相談窓口」や「医療機関」などの紹介は、実際に困っている人への強い支えになる情報です。

「相談する」ことの意味としては、

a) 話してみて初めて、「自分はこんなふうに感じていたのか」と気づくことがあります。

言葉にすることで、もやもやしていた気持ちが形を持ち、自己理解が深まります。これを心理学では「外在化」と呼びます。

b) 相手がアドバイスをくれなくても、「それはつらかったね」「大変だったね」と共感されるだけで、私たちは孤独感から解放され、心が軽くなります。

これは感情の承認が持つ癒しの力です。

c) 自分とは異なる視点や経験を持つ人と話すことで、「そんな考え方もあるのか」「別の方法があるかもしれない」と気づかされることがあります。これは問題解決のきっかけになります。

※どうしても誰かに話すのが難しい場合は、まず「書き出す」「録音する」「自分で自分に話しかける」などの方法もあります。

 

3.結び
この番組は、ストレスへの対処を「我慢」や「耐える」ことと結びつけず、「気づき」「選択」「見直し」「発散」「相談」という、自然で無理のない形で整理してくれており、温かみがあり、かつ非常に実用的です。