ラジオ番組 ふんわり「タテ型回路VSヨコ型回路」を聞いて(2)
ラジオ番組 ふんわり「タテ型回路VSヨコ型回路」を聞いて(1)の続きです。
具体例をいくつか見ましょう。
① 「Aさんは若い時はタテ型でしたが、カウンセラーの勉強をして、人の話をお聞きするようになってから切り替えられるようになりました。
人の話を聞く時はヨコ型ということでね。
だから人が成熟して行くっていうのは、ハイブリッドになっていくってことなんです。
また、ヨコ型回路の使い手が、例えば会社で管理職になって、タテ型を使わざるを得ない状況で、タテ型を意図的に使っていく。
こうやってハイブリッドになった人たちが、コミュニケーションの達人になります。
ハイブリッドというのは、うまく切り替えて、いいとこどりをできるようになることです。
ハイブリッドで言うと、後天的に手に入れたものの方が、実はプロフェッショナルとしては使いやすいです。
だからタテ型がヨコ型を手に入れると、共感の幅が広い。
逆にヨコ型のかたがタテ型を手に入れると、この目的意識がしっかりしてぶれない。
相手が嫌いだからといって目的を変えたりもしない。
そんなわけで、後天的に手に入れたものをProとして使いやすい。」
この番組で、まず心に残ったのは、「人が成熟していくっていうのは、ハイブリッドになっていくこと」という一文です。
この一言には、人生のあらゆる場面で求められる変化への柔軟さと、それを通じて人が成長できるという希望が込められています。
Aさんがカウンセラーの勉強を通してヨコ型の回路を身につけたというエピソードも非常にリアルで、人は変われるし、意図的な学びと実践で思考の幅を広げられるというメッセージが力強く伝わってきます。
特に印象的なのは、「後天的に手に入れたものの方がプロフェッショナルとしては使いやすい」という視点です。
これは実感として非常に共感できます。
苦労して身につけたものこそ、意識的に使いこなすことができ、相手や状況に応じた「選択」ができるようになる。
それがまさに、真のコミュニケーション能力であり、「達人」と呼ばれる人の共通点なのだと思います。
時代の変化が速く、多様性が求められる今の社会において、最も必要とされるのはこのような柔軟で自在な“ハイブリッド型”の人間性かもしれません。
② 「例えば上司に「今日悪いけど、ちょっと残業してこの資料仕上げて帰ってくれない。」と言われます。
よくあるシチュエーションね。このときにタテ型回路を起動したか、ヨコ型回路を起動したかによって答えが違う。
タテ型回路を起動すれば、残業ですか?20分だけできるなあ。じゃあ目鼻をつけて帰りますねって言えるんです。
ヨコ型回路を起動しちゃうと、事情とか心情とか、ここまでの過去の履歴とかが1/1000秒ぐらい頭に浮かぶから、勘弁してよ、こういうやっつけ仕事全部俺じゃんって、気がついちゃうんですね。
しかも今日はさあ、ずっと予約が取れなかった店の予約を取ってから無理なんですけどっていうのが頭に浮かぶから。
口の利き方としては、それを言っちゃうと、上司からはなんかPro意識が足りないと思われちゃうわけですよ。
誰にでも、被害者側になるPro意識の足りない回路も、20分で残業できるので目鼻をつけて帰りますと言えるできる回路もどっちも入ってるので、うまく起動することが大事である。」
この番組にあるように、職場での「急な残業依頼」ほど、頭の中で複雑な感情や思考が一瞬にして交錯する場面はありません。
その瞬間的な思考の流れを、まるで実況中継するように描いているのが印象的です。
特に「ヨコ型を起動しちゃうと、事情とか心情とか過去の履歴が1/1000秒で浮かぶ」という表現は秀逸で、まさにその通りだと笑ってしまうほどの説得力があります。
そして、そういう気持ちになっても不思議ではない、それが“人間らしさ”だという前提に立っているところが、この番組の優しさだと思います。
一方で、タテ型回路を起動すれば、「できる範囲でやります」という目的と条件の調整をすばやく行う冷静さが発動する。
これはまさに、状況に応じて“切り替えられる”人がプロフェッショナルである、という実践的なメッセージにつながっています。
③ 「例えば、うちの孫が朝一滴も水を飲まないとき、上の子の時のことを思い出して、ヘルパンギーナっていう喉の感染症だと気づいた。
ヨコ型回路が30年四ヶ月前に、私の記憶をぽんと飛ばした。
ヨコ型回路が心配という感情を起爆剤にして私の記憶をぽんと飛ばしたのです。
ヨコ型は感情とともにタイムトラベルできる。
だから素晴らしい演算。
なぜ素晴らしいかっていったら、人工知能にできないから。」
この番組にある「ヨコ型は感情とともにタイムトラベルできる」という表現には、人間の脳がいかに感情と思い出を結びつけて記憶を取り出すかというメカニズムが、わかりやすく美しく描かれています。
これは冷静な分析というよりも、感性に訴えかける認知の魔法のようにうまく表現されています。
最後の「なぜ素晴らしいかっていったら、人工知能にできないから。」という一文には、読者としてハッとさせられます。
AIには高速で正確な演算ができますが、人間のように“心配”という感情をトリガーにして30年前の出来事を思い出すことはできない。
それは、単なる情報処理ではなく、「生きてきた時間」の重みそのものだからです。
④ 「北海道40代Cさんは夫と中学一年生の息子のことで悩んでいます。
息子が何気なく話した学校での出来事や日常会話に対し、夫は毎回お前はこうしたほうがいいんじゃないかなどとアドバイスをします。
小さい頃は息子も素直に耳を傾けていたのですが、今の息子はただ共感して聞いて欲しいだけで、アドバイスされるのが嫌な様子。
お母さんは黙って聞いてくれるからいいけど、お父さんに話すと面倒なことになるから話したくないと、最近は夫と話すのを避けるようになりました。
この問題に多対する解決方法は、夫は子供の話をただ聞いてあげるだけでいいのです。
息子さんの脳の中の世界観が、親に共感して受け止めてもらったことで、世界観が確立するんです。
外で経験したことが世界観となって確立するためには15歳まで親が共感し承認することが必要です。」
この番組にある「夫は毎回アドバイスをする」というくだりは、多くの家庭で見られる典型的な構図で、“良かれと思って言っている”アドバイスが、逆に距離を生むというもどかしさが伝わってきます。
特に思春期に入った子どもは、指示や正論ではなく、「わかるよ」「そうだったんだね」と受け止めてもらうことに安心感を覚えます。
また、「お母さんは黙って聞いてくれるから話したい」という息子の反応には、子どもがいかに繊細に“聞かれ方”を感じ取っているかが表れていて印象的です。
親の態度ひとつで、子どもの自己表現の扉が開くか閉じるかが決まるという現実は、非常に重みがあります。
特に深い気づきを与えてくれるのが次の部分です:
「親に共感して受け止めてもらったことで、世界観が確立する」
「15歳までに承認されることが必要」
ここでは、単なる対話の問題ではなく、子どもの人格形成や自我の確立にまで関わる重要な発達課題として語られており、共感が“感情的な優しさ”だけでなく、“成長に必要な栄養”であることが明らかにされています。
⑦47歳、女性Dさん
「共感しながら話を聞くについて、相手が人の悪口を言う場合はどうすればいいのでしょうか。
共感もできないし、解決策を提案するのも違う気がして、いつも困ります。
ひどいと思わない?って言われた時に、そうねって言っちゃうと、Dさんがひどいって言ってたって、後で言われちゃう。
これがね、ママ友付き合いの大変なところ。
だから、うっかり共感をするのは危ないし、共感もできない。
そういう時は「そっか、そうなんだね。」これ一択です。
もう気持ちには100%共感するけど、ことの是非については保留させていただきますという立場をつらぬくこと。」
この番組では、まず、「共感しながら話を聞く」という行為が、いつもシンプルにできるわけではないという現実を、非常に正直に描いていることに共感します。
特に「共感もできないし、解決策も違う気がして、いつも困ります」という部分には、多くの人が日常で感じているもやもやが素直に表現されており、「わかるわかる」と頷きたくなります。
また、「ひどいと思わない?」「そうねって言っちゃうと、後で『○○さんもそう言ってた』となってしまう」というくだりは、まさにママ友関係や職場の人間関係でありがちな罠です。
共感が人間関係を円滑にする一方で、不用意な共感は“共犯”のように使われてしまう危険もあるという鋭い指摘に、ハッとさせられます。
そして、解決策としての「そっか、そうなんだね。」というフレーズは絶妙です。
感情には寄り添いつつ、是非の判断には踏み込まないという、共感と中立の絶妙なバランスを取った魔法の一言だと感じました。
これは、無理に正義を示さず、相手を否定も肯定もしない大人の知恵であり、まさに人間関係のサバイバル術とも言える巧みな表現です。