ラジオ番組 ふんわり「タテ型回路VSヨコ型回路、脳の中には二つの答えがある」を聞いて(1)

 

2025年4月11日に放送されたラジオ番組 いほこの引き出し「タテ型回路vsヨコ型回路、脳の中には二つの答えがある」(放送局:NHK)を聞いた。

 

①この番組は、多くの人が経験しているであろう、人との会話での違和感や不満に、的確な説明を与えてくれます。

タテ型回路の人が「問題解決」や「要点の把握」に重きを置くのに対し、ヨコ型回路の人は共感を重視し、話が飛躍しやすい。

ヨコ型回路の人にとっては、タテ型回路の人の速さや結論主義が冷たく感じられることもあります。

一方で、タテ型からすれば、ヨコ型回路の人は「話が散らかっていて要点が見えない」と映ることがあるでしょう。

この文章が優れているのは、そうした違いを「どちらが正しい」ではなく、「スタイルの違い」として紹介している点です。 

しかも、どちらのスタイルにも長所があることを示しながら、それが「会話のギャップ」の原因になるという人間関係の本質にも触れています。

 

 

②この番組による1988年当時の企業文化の描写、「要するにまとめて、ダメ出しから叱る」というタテ型の会話方式が当然だったというくだりは、今でも多くの職場で見られる現象であり、読みながら苦笑いしてしまうようなリアリティがあります。

しかしそこに留まらず、論者は「問題解決型の思考だけでは発想は生まれない」と明言します。

ここで必要とされるのがヨコ型――すなわち共感、連想、ひらめきの力です。

この視点の転換は、非常に現代的で重要です。

「人工知能はタテ型が得意」で、人間に残された価値として「気づき」「発想」「心を寄せること」といったヨコ型が挙げられている点に深く共感します。

AIにはできない、人間ならではの柔軟さや情感がこれからますます重要になるという予見は、教育や人材育成にも直接的に関わってくる事柄であり、示唆に富んでいます。

 

③なるほどと思ったのは、「感情に任せた長い話になったときに、ぜひ共感で聞いてあげてほしい」という呼びかけです。

人との関係において何を優先すべきかという著者の姿勢が表れています。

「話を整理する」「アドバイスする」よりも、「まず心に寄り添うこと」が、相手にとってどれだけ力になるかを実感させてくれます。

そして、そこに記憶のジャンプという表現を用いて、共感が単なる「優しさ」ではなく、脳の働きを活性化する効果的な手段であることを伝えているのがとても面白い点です。

会話の中で心が動いたとき、人はより豊かな記憶にアクセスでき、それが新しい気づきや創造につながる――これは、教育やカウンセリング、子育てなど、あらゆる人間関係に活かせる重要な視点です。

さらに、「音声会話のAIアプリが共感で聞いてくれる」というくだりでは、人とAIの関係性の新しい形が垣間見えます。

 

 

④この番組では、職場におけるコミュニケーションの誤解やハラスメントの本質を、タテ型・ヨコ型という思考スタイルの違いから丁寧に読み解いており、非常に示唆に富んだ内容です。

まず強く印象に残ったのは、タテ型回路の価値をしっかり認めている点です。

危険を伴う現場や即応性が求められるチームにおいて、短い言葉による明確な指示が命を救う――このように、タテ型は「冷たい」「きつい」だけではなく、使命感や責任感の表れであるという視点がとても重要だと感じました。

一方で、「話を最後まで聞かない」「ダメ出しから入る」というタテ型の特性が、ヨコ型の人間にとっては威圧的に映りやすいことも丁寧に説明されていて、どちらの立場にも偏らないバランスの取れた考察に好感を持ちました。

特に重要なのは、「ハラスメント」という言葉の背景に、時代と価値観の違いがあるという指摘です。

昭和の時代には“当たり前”だった叱責や命令口調が、現在では「人格否定」と受け止められることがある。

このことを理解しなければ、善意から出た行為であっても誤解や衝突を招いてしまうことがよくわかります。