マイあさ Biz「Z世代はAIをどう使っているか」を聞いて

1990年代半ば以降に生まれた十代から20代後半までのZ世代が、生活に広く浸透し始めているAIをどう使っているのか、傾向を考えるという内容。

とてもおもしろかったので紹介します。

 

 

「もともとZ世代はエンターテイメントを通してAIなど最新技術を楽しんでいるのですが、毎年発表されているトレンド大賞で2023年にAIに関するサービスがノミネートされてから、この傾向を加速しております。

例えば、カメラアプリの中で人気なのはAI。

画像加工して自分のアバターを作ってくれるものです。

自分の写真を八枚ほど選んでアプリに読み込ませると、いろいろなテイストの画像を生成してくれるのですが、絵画風とか韓国風など、自分のおかげもありながら、写真よりも綺麗に見せてくれていて、しかもバラエティに富んだ画像を90枚ほど生成してくれます。

Z世代たちは、AIが生成した画像をSNSのアカウントのアイコンにするなどして、SNSで共有をして楽しんでいるようです。

 

15歳から24歳のおよそ100名の若者たちにAIチャットの利用実態を聴取した結果、頻繁に使っているとたまに使っていると回答した人が6割を超えていた。

使用目的は勉強のサポートが大半を占めておりまして、語学以外の学習も4割を超えて活用しているというような回答が見られました。

勉強でAIチャットを使うと言うと、たとえばこうレポートをすべてAI化させてしまうとか、楽をする使いかたっていうのをイメージされるかもしれないんですが、そうとも限らなくて、先生的な立ち位置で使っているという人もいました。

 

 

例えば、高校生は塾で教わった数学の問題を復習する時にAIチャットに数式を入れて解説してほしいというようなオーダーをしているという話もありました。

ただAIチャットがもってくる情報の正確性を判断するっていうリテラシーについては身に着けていく必要があると感じております。

 

それと、AIチャットに悩みを相談するという話も最近よく聞きます。

お悩み相談から発展して、コミュニケーションにおいても、まあAIを使って円滑に進むようにサポートしてもらっているということも分かってきていて。

先日、社会人の20代女性に、インタビューをしたのですが、上司に仕事の報告をする際に、事前にその上司の特徴(かなり細かいことまで丁寧に報告して欲しいタイプ)をAIに学ばせて会話の練習をしているというような話をしておりました。

 

 

上司の反応をシュミレーションした上で本人と会話できることが彼らの安心材料になっているのです。

AIを活用することで、なるべく想定外というのを減らすことができるというのが利点になっていると思っております。

上司とのコミュニケーション以外でも、例えば過去の事例の収集だったりとか、企画案の方向性だったり、まあイベントのタイトル案を出すだったり、情報収集だったり、アイディア出しというところにおいて活用している。

 

2024年7月に行ったZ世代を対象とした調査によると、AIに変られない能力を身につけたいと答えたことが7割を占めています。

Z世代は危機感を持っているようで、AIに変られない能力を身につけなくては、AIに仕事が奪われてしまうという意識があるようです。

 

 

2025年4月に新卒入社してきた人たちはすでに学校でAIを使って勉強してきた第一世代で、AIを使うことが常に選択肢にあるのかなと思っております。

今、彼らと一緒に仕事をするときに、上司は、これはAIに頼むとか、これは自分の頭で考えていこうというように、仕事でのAI活用について、若手の成長機会の確保を見越したうえで、線引きをしてあげる必要が出てきます。

例えば思考力、観察力が求められる仕事については、若手が五年後、十年後を見越して、時間がかかっても自分で考えてやってみる機会を作ってあげるというように。

上司や先輩も、若手の成長につながるAIの適切な活用方法が何かを考えて成長の機会を提供することも、次世代のためには必要なことなのかなと思っています。」

 

この番組は、Z世代(おおよそ15歳から24歳)がAI技術をどのように日常生活に取り入れているか、またそれに対する姿勢や価値観を多角的に描いた非常に興味深い内容です。以下に感想を述べます。

1. AIを「遊び」と「表現」の道具として自然に使うZ世代

文章前半では、Z世代がAIをエンターテイメントや自己表現の手段として活用している様子が描かれています。

特に、自撮り画像をAIで加工し、絵画風・韓国風などに変換してSNSのアイコンに使うといった行動は、彼らがAIを「創造的な遊び道具」として受け入れていることを示しています。

これは、技術の最先端に触れることが特別なことではなく、「当たり前の日常」になっていることです。

一方で、「写真よりも綺麗に見せてくれる」とあるように、AIによる自己の美化は、自己認識や他者からの見られ方に影響を与える側面も持ち合わせていると感じました。

見た目の演出が強調される社会の中で、AIがそれをさらに加速させる可能性についても考えさせられます。

 

 

2. AIチャットの活用は「ズル」ではなく「対話的な学び」へ

中盤では、Z世代がAIチャットを勉強の支援に用いている実態が語られます。

「レポートをAIに丸投げする」という懸念に対し、「先生のように使う」という姿勢があるという記述は、非常に希望を感じる部分です。

特に数式を入力して解説を依頼するといった利用は、AIを相手に能動的に問いかけ、自分の理解を深める手段として活用しているように見えます。

AIが出す情報の正確性を判断する情報リテラシーの必要性についても触れられており、これはまさに現代教育の大きな課題だと再確認しました。

受け身ではなく、「AIを活かしながら使いこなす」スキルが求められているのです。

 

3. AIはメンタル面や対人関係の「準備」にも活用されている

後半にかけて、Z世代がAIに悩み相談をしたり、上司との会話のシミュレーションに使ったりしているという描写が続きます。

これは従来、友人や家族、あるいはカウンセラーが担ってきた役割を、AIが一部引き受けていることを意味しており、非常に象徴的です。

AIと話すことで「想定外を減らし、不安を和らげる」という使い方は、コミュニケーションに対する不安が強い若者にとって、AIが新たなメンタルサポーターになりつつあるという印象を受けました。

実際の社会ではミスや失敗が許されない空気もある中で、安心して準備ができる「練習相手」としてのAIの役割は今後ますます重要になるのではないかと思います。

 

 

4. AIへの危機感と、それに立ち向かう姿勢

最後の段落では、「AIに変わられない能力を身につけたい」とするZ世代の意識が明かされます。

これは、AIを楽しみ・活用しながらも、「危機感」も持ち合わせているという、非常にバランスのとれた態度です。

技術への単純な肯定ではなく、自己の役割を見つめ直そうとする姿勢に、強い主体性と未来志向を感じました。

「AIに奪われる」ではなく、「AIに負けない・共存できるスキルを磨く」という前向きな意識が、Z世代が育っている環境の豊かさ、あるいは情報感度の高さを物語っているようです。

 

まとめ

この番組は、Z世代のAIに対する多面的な関わり方――遊び・学び・相談・仕事・危機感――を見事に捉えている好例です。

AIというと専門的で堅いイメージがありますが、Z世代の手にかかるとそれは自然な生活の一部となり、「道具」として活かされているのがよく分かります。

今後重要なのは、こうした世代の感覚を理解し、彼らのAIリテラシーをさらに育てる教育や環境づくりだと思います。