タイパ・コスパ意識と目的志向の出会い――20代に広がる結婚相談所という合理的選択
2026年1月8日に放送されたラジオ番組「マイあさ!」マイ!Biz「結婚相談所に集う若者」久我尚子(ニッセイ基礎研究所上席研究員)(NHK) を聞きました。

1.現象の核心:結婚願望は衰えていない
まず重要なのは、この放送がはっきり示している点――「婚姻数は減っているが、若者の結婚願望は依然として高い」という事実です。
18〜34歳の未婚者の約8割が「結婚したい」と考えているというデータは、「若者が結婚を軽視している」「結婚は時代遅れになった」という通俗的な見方を、静かに否定しています。
むしろ変化しているのは、結婚そのものの価値ではなく、結婚に至るまでの「道筋の選び方」です。
結婚相談所を選ぶ20代が増えているという事実は、結婚が“遠ざかっている”のではなく、より現実的に、計画的に扱われるようになったことを示しています。
2.結婚を「ロマン」から「生活設計」へと捉え直す成熟
番組で語られていた結婚は気持ちだけでなく、生活の見通しと大きく関わるという視点は、非常に成熟した結婚観だと評価できます。
かつては
・恋愛感情の高まり
・偶然の出会い
・勢いやタイミング
が重視されがちでした。
しかし現代の若者は、結婚を
・長期的な生活のパートナーシップ
・共働きを前提とした経済設計
・人生の持続可能性を高める選択
として捉えています。
これは結婚を軽く見ているのではなく、むしろ結婚を「重く」考えているからこそ、慎重かつ合理的になっていると言えるでしょう。
3.「タイパ・コスパ」志向は冷たさではなく誠実さ
Z世代の特徴として語られた
・タイパ(時間対効果)
・コスパ(費用対効果)
は、ともすると「効率優先で冷たい」「打算的」と批判されがちです。
しかしこの文脈では、むしろ逆です。
・偶然に任せないという誠実さ
・「いつか自然に出会えたら」という曖昧さを避ける
・結婚の意思がない相手との関係に時間を費やさない
・出産やライフプランを現実的に考える
これらは、自分にも相手にも誠実であろうとする姿勢です。
結婚相談所をプロに任せて、最短距離で結婚したいと語る若者の言葉には、「恋愛を軽視している」のではなく、人生の重要な選択を専門性に委ねる合理性が感じられます。
4.「失敗回避」は臆病さではなく、経験から学ぶ知性
番組が指摘した失敗を回避したい心理も、非常に現代的で健全です。
今の若者は、
・離婚
・価値観の不一致
・家事・仕事・お金をめぐる衝突
といった「結婚後の困難」を、身近な現実として知っています。
だからこそ、
・価値観
・生活設計
・就業形態
を事前にすり合わせることを重視する。
これは「挑戦しない態度」ではなく、情報を集め、比較し、リスクを下げるという知的な意思決定です。

5.マッチングアプリとの対立ではなく、役割分担という視点
この放送のとても優れている点は、結婚相談所とマッチングアプリを「優劣」で語らず、役割の違いとして整理しているところです。
・マッチングアプリ
→ 出会いの「入口」を広くする
・結婚相談所
→ 結婚までの「角度」を高める
この整理は的確で、社会を分断しません。
若者が結婚相談所を選ぶのは、アプリに失望したからではなく、目的がより明確になった段階で、適切な手段に移行しているだけなのです。
6.感想
全体を通して感じるのは、この現象が「若者の恋愛や結婚の衰退」ではなく、結婚文化の進化を示しているということです。
・感情だけに頼らない
・偶然に委ねすぎない
・自分の人生と相手の人生を尊重する
こうした姿勢は、むしろ大人びており、責任感があります。
結婚相談所に集う20代の若者たちは、「夢を失った若者」ではなく、 現実を直視しながら、それでも結婚を諦めていない世代だと感じました。
この番組は、そうした若者像を冷静かつ温かく描き出しており、不安や不満を煽るのではなく、静かな希望を感じさせる社会分析になっていたと思います。

