「ステーブルコインの今後」加谷珪一(経済評論家) ラジオ番組「マイあさ!」マイ!Biz (NHK) を聞いて

2025年12月4日に放送されたラジオ番組「マイあさ!」マイ!Biz「ステーブルコインの今後」加谷珪一(経済評論家)を聞きました。

1.10月に発行された“円建てステーブルコイン”のもつ意味
国内で初の円建てステーブルコインが登場したことは、単なる金融商品の誕生ではなく、日本の決済インフラがついに国際標準(ブロックチェーンベース)に足を踏み入れたという大きな転換点です。
ビットコインなどの暗号資産が「投機に向きやすい」のに対し、ステーブルコインは価値の変動を極小化し、「決済・送金のインフラ」としての用途を明確にしています。
これは、電子マネー(Suica、PayPay等)では届かない国際送金・クロスボーダー決済という“次の地平”を開く技術であり、日本でもようやくその扉が開かれたことになります。

2. 暗号資産とステーブルコインの本質的な違いを捉え直す
加谷氏は、ビットコインとステーブルコインの違いを丁寧に説明しています。
〇 ビットコイン
・管理者がいない(分散型)
・価値の裏付けがない
・ボラティリティが非常に大きい
〇 ステーブルコイン
・法定通貨を裏付けにして安定させる
・投資対象ではなく決済インフラに近い
・技術は暗号資産と同様だが、目的は異なる
この説明は、一般のリスナーにも非常に分かりやすく、ステーブルコインの理解を進めるうえで重要な点を押さえています。
特に「資産ではなく決済手段」という位置づけの明確化は、今後の議論でも非常に本質的です。

3. ドル建てステーブルコインが世界を席巻している理由
〇ドル建てステーブルコイン(USDC、USDT)はすでに1日数兆円規模の国際送金手段として使われている現実があります。
背景には:
・国境を超えた送金がほぼ即時
・手数料が極めて安価
・銀行を経由しない自由度
などの特徴があります。

〇 対して日本のステーブルコインは?
匿名性を抑え、犯罪利用を避ける形で設計されているため、海外送金の自由度は意図的に制限されている。
この点を加谷氏は “リスク低減を優先した日本らしい慎重設計” と評価しており、安全性と利便性のバランスをどうとるかという政策的判断が端的に表れています。

4. ステーブルコインとCBDC(中央銀行デジタル通貨)との違い
ステーブルコインは民間企業が発行するのに対し、CBDCは中央銀行が直接発行します。この点で、「誰が管理しているか」「国家の信用がどこにあるか」という観点が分かれます。
加谷氏は、両者の違いを明確に示しつつ、「使っている技術は基本的に同じ」であることも指摘しています。
つまり、今後は制度設計と規制の差が、技術以上にユーザー体験や社会的な受容に影響を与えるという示唆でもあります。

5. 感想
この放送の内容は、単なる金融ニュース以上に、日本のデジタル経済の“出発点”を見せてくれるものでした。
特に印象的なのは:
・日本が安全性重視で慎重に制度を整えていること
・世界では“ドルステーブルコイン経済圏”が猛烈な勢いで拡大していること
この対比は、今後の日本の金融政策やデジタル経済戦略を考えるうえで示唆に富みます。
また、ステーブルコインとCBDCが競合ではなく“役割分担する存在”になりうるという示唆も非常に興味深い点です。
今後、日本のステーブルコインが国内決済の効率化だけでなく、安全性を保ちながら国際送金領域でも発展できるかどうか──その行方が注目されると強く感じました。