「サンタクロースではなくシンタクラースがオランダに上陸!」福成海央(オランダ在住ライター) 「ちきゅうラジオ」ちきゅうメイト (NHK) を聞いて
2025年11月23日に放送された番組「ちきゅうラジオ」ちきゅうメイト「サンタクロースではなくシンタクラースがオランダに上陸!」福成海央(オランダ在住ライター)を聞きました。

1.歴史的・宗教的層(聖ニコラウス)
・4世紀トルコの実在人物が起源
・“貧しい子供を救済した聖人”という明確な道徳モデル
・「子どもの守護聖人」というキリスト教的教育観が今日も続いている
ここには「子どもを守る存在」「弱者を助ける道徳的価値」が物語の中心に据えられています。
2. 物語としての層(スペインから蒸気船で到着)
・スペインから蒸気船に乗ってくる
・ピートたちという従者がいて、全国に散って見回る
・毎年“事件”が起きる(嵐・プレゼント紛失・家に他人が住んでいる)
これはまさに物語の“シリーズ化”であり、「今年はどうなる?」と全国で期待が高まる。
その構造は、児童文学やTVドラマの季節シリーズに近いものです。
3. 社会全体を巻き込むメディア層
・全国生中継
・「シンタクラース・ジャーナル」という特番
・子どもだけでなく大人も見る“国民的イベント”
ここで注目したいのは、「文化儀礼 × 現代放送メディア」として高度に制度化されている点です。
4. 家族・教育の層(靴にニンジン/手紙の返信)
・子どもは毎晩靴を置き、ニンジン(馬のため)を入れる
・シンタクラースが来たかどうか、毎晩わくわくする
・手紙に返事をくれる
・12/5に必ずプレゼントが届くとは限らず、ドキドキする
これは「期待」「努力」「善行」「信頼」という教育的価値を体験的に学ばせる、儀礼的な仕掛けになっています。

5. 感想
この番組が伝えるシンタクラースの魅力は、単に「サンタの別バージョン」ではなく、オランダ特有の文化として確立されていることです。
日本やアメリカのクリスマスは“象徴的・抽象的なサンタ”だが、オランダは「毎年アムステルダムに上陸する」という具象的でリアルな祭礼。
これはオランダの「地域行事への参加率の高さ」「家族中心主義」と相性が良い文化です。
嵐でプレゼントが落ちる/家に誰か住んでいた——こうした“毎年のトラブル”は、単なる演出ではなく、国民参加型の即興劇(リアルタイム物語)のようなものです。
オランダ人が大事にする“遊び心”が表れています。
単なる観光紹介ではなく、「生活者が体験するリアルなシンタクラース文化」紹介してくれた点は特に評価できます。
子どもが靴にニンジンを入れる、返信が届く、イベントに全国が注目する——こうした“生活の手触り”がとてもよく伝わりました。
シンタクラースは単なる童話ではなく、“社会全体で子どもを喜ばせる仕組み”として成熟している点が素晴らしい。
今回の放送は、「シンタクラースは、単なるサンタの元祖ではなく、オランダの社会・教育・共同体文化の核をなす存在」という大事な点を、軽やかで楽しい語り口の中にしっかり含めていた優れた内容でした。
