「タワーマンション人気を考える」池田利道(都市計画コンサルタント) ラジオ番組「マイあさ! 」マイ!Biz (NHK) を聞いて
2025年11月18日に放送されたラジオ番組「マイあさ! 」マイ!Biz「タワーマンション人気を考える」池田利道(都市計画コンサルタント)を聞きました。

1.タワーマンション人気の背景にある「二つの需要」
番組は、タワーマンションの人気が「居住のための需要」と「投資目的の需要」の二層構造になっている点を鋭く指摘しています。
眺望・機能・共有施設の豪華さが生む“合理的な魅力”と、高値で売れる・賃貸に回せるという“金融商品としての価値”。
この二つが重なった瞬間、マンションは「家」というより「資産管理の器」になってしまう。
番組の核心は、まさにここにあります。
特に、「7割が非居住」という一例は、日本の都市居住の構造変化を象徴する数字であり、聞き手に強烈な現実感を与えます。
2. 投資化が生む“管理の空洞化”という都市の病
番組が丁寧に取り上げたのが、管理組合の弱体化です。
投資目的の所有者は、管理費に無関心、修繕・合意形成に消極的、長期居住者に必要な環境整備に興味がない、という構造的問題を抱えます。
これは単なるマンションの問題ではなく、都市のコミュニティ構造そのものの劣化を意味します。
都市計画の専門家ならではの視点で、「管理組合=居住者自治の基盤」という前提を明確に示してくれた点が、番組全体の質を高めています。
3.地域の賃貸住宅市場までゆがめる“人気の副作用”
タワマン価格高騰に引きずられ、賃貸が上昇し、住みたい地域に住めない住民が増えるという指摘は、都市の格差拡大を的確に捉えています。
都市の居住環境は本来、通勤、学校、生活圏に近い“身の丈の住まい”を誰もが選べるべきですが、タワマン偏重の資本流入がそれを奪っている、という問題点が浮かび上がります。
4. 長期的視点で見た“高層集合住宅”の構造リスク
40年後・50年後のタワマン老朽化についての指摘は、日本の住宅政策そのものに一石を投じるものです。
・膨大な建て替え費用
・高齢化した居住者の合意形成の困難さ
・空き家化
・最悪「都市の廃墟化」
これはヨーロッパでも、高層団地が社会問題化した歴史的事例と響き合う内容であり、都市計画専門家の危機感が強く表れていました。

5. 共有スペースの“地域化”という前向きな提案
最後に池田氏が提示した「タワマンの共有スペースを地域につなぐ」という提案は、非常に建設的です。
ゲストルーム、パーティールーム、フィットネス…これらを地域の人にも開き、交流拠点、多世代交流、災害時の一時避難拠点等として位置づける発想は、タワマンの“閉じた城塞化”を防ぐ方向性として特に評価できます。
6. 感想
投資化・管理組合の空洞化・価格高騰・将来リスクなど、都市問題の核心をわかりやすく整理しており、ラジオの短い枠でこの密度は見事です。
「7割が非居住」「法人保有3割超」など、数字の提示により、抽象的議論にとどまらないリアリティが生まれていました。
特に心に残ったのは、タワマンの将来像を“居住者も建物も老いていく”と表現した部分。
単なる不動産市場のニュースではなく、都市の命の時間軸を考えさせられる、とても含蓄のある言葉でした。
また、「共有スペースの地域開放」という提案は、都市が抱える孤立化・格差・コミュニティ疲弊を乗り越えるヒントにもなると思いました。
タワマンを批判するだけでなく、「どうすれば都市がもっと豊かになるか」を探る姿勢が、今回の放送をとても価値あるものにしていました。

