「冬の北海道は道路の閉鎖にご用心」綾野雄次(北海道) ラジオ番組「マイあさだより」(NHK) を聞いて

2025年11月17日に放送されたラジオ番組「マイあさだより」「冬の北海道は道路の閉鎖にご用心」綾野雄次(北海道)を聞きました。 

1. 北海道の冬に固有の「交通リスク」を軸にした論旨の明瞭さ
綾野氏の語りは、単なる「寒いので気をつけましょう」という一般論ではなく、冬の北海道が本質的に“交通の不確実性”によって成り立つ地域であることを前面に出しています。
特に、以下の3点が非常に示唆的です。
・道路閉鎖は珍しい事ではなく“構造的に起こる現象”であること
・インターネットで調べられる時代にも、現地に行かなければ分からない状況があること
・距離が近くても到達できないことがあるという、旅行者の「直感」に反する事実
旅行者が「地図で近い=すぐ行ける」と考える思い込みは根強いですが、北海道の冬では全く通用しません。
この点を明確にしていることが、話の説得力を生んでいます。

2. 「峠を避ける」という地形ベースの提案の説得力
北海道旅における最大の落とし穴が 峠越え であるという指摘は、地域特性への理解が深く、合理的です。
・峠は風が強く吹き溜まりもできやすい
・日中でも路面が凍結しやすい
・冬期通行止めが多い
これらは地形と気象条件の組み合わせから生じる本質的なリスクであり、単なる“注意喚起”ではなく 科学的・構造的な視点 に基づくアドバイスです。
旅行ガイドでは語られにくい点が明確に説明されており、ラジオならではの価値が出ています。

3.「最終泊は空港の近く」という旅程設計の戦略性
これは旅慣れた人ほど強く同意するポイントです。
北海道の冬は「予定通りに動ける」という前提が崩れやすいため、遠方 → 近方へ移動して戻ってくるという「縮小型旅程」は非常に合理的。
特に飛行機旅では、最終日に直行しづらい場所へ泊まってしまう=旅全体のリスクとなるため、この一言は非常に実践的で旅行者の命綱になる内容です。

4. 観光の自由さより「安全を優先する旅」の提案
印象的なのは、語り手が旅行者の“夢”を壊さないよう配慮しながら、安全を楽しみの前提に置く というメッセージを丁寧に伝えている点です。
・冬期に閉鎖されるバス路線
・ローカル路線の減便
・近距離でも道路閉鎖で迂回不可
これらは現地の生活者でなければ分からない情報であり、観光客の「理想」と「現実」のギャップを誠実に埋める内容になっています。

5. 感想
私自身、今回の話は「北海道の冬旅の真価とは“厳しさとの付き合い方”なのだ」と改めて思わせられました。
冬の北海道は、美しさと同時に厳しさを内包しています。
・雪原の静けさ
・透明な空気
・霧氷やダイヤモンドダストの神秘
これらは冬のリスク管理があってこそ、安心して味わえるものです。
綾野氏の案内は、旅行者が「不安を避ける」だけでなく、冬の北海道を“正しく理解して楽しむ”ための知恵を授けてくれる内容でした。

旅行者にとっては安全ガイドであり、北海道にとっては冬の魅力をきちんと伝える“観光教育”でもあります。