《「ながら運動」で健康長寿》 長野茂(日常ながら運動推進協会代表) 「ラジオ深夜便」インタビュー (NHK) を聞いて

2025年11月6日に放送された番組「ラジオ深夜便 」インタビュー《「ながら運動」で健康長寿》長野茂(日常ながら運動推進協会代表)を聞きました。

1.「ながら運動」の定義と哲学的転換
長野氏の提唱する「ながら運動」は、日常生活の“身体活動”を“運動”に昇華させるという、パラダイムの転換です。
家事や通勤といった“避けられない動き”に、少しだけ意識を加えることで、従来の「運動=時間と場所を決めて行うもの」という概念を解体します。
この視点は、人間の意思決定に無理なく運動を組み込むという点で画期的です。

2. 科学的根拠に裏打ちされた「ながら運動」
番組では、階段昇降やウォーキングの「METs(運動強度)」が紹介されており、これが非常に説得力を持っています。
たとえば、座っている状態を1とすれば、階段昇降は8.5、ウォーキングは2~3と明示され、日常動作にも高いエネルギー消費があることがわかります。
これにより、「ジムに行かなければ効果がない」という誤解を取り除き、「生活=運動」という再認識を生むことに成功しています。

3, 実践的で親しみやすい具体例の数々
長野氏が紹介した具体的な“ながら運動”は非常に親しみやすく、すぐに真似できるものばかりです。

①椅子に浅く座りなおす。両手で椅子を持って安定させる。
両足を持ち上げて、胸の方に近づける。ぎゅっと上げて、そこで静止する。10ぐらいまで維持したら、開放する。 1回やったらそれでいい。 一時間ぐらいたって。気がついたら、まだ1回だけ。一日に8回から10回できる。

②椅子に座っていて、両足を広げる。 両手を膝の上に乗せる。 体を前傾させる。 立ち上がろうとして、おしりを浮かせる。
1cmか2cm浮き上がらせたらピタッと止まる。できれば10ぐらいまで維持する。

③洗濯物を干す時に、カゴを床の上において、一枚撮る。 その時に、腰を曲げないで、しっかりと膝を曲げて取る。
しゃがむというのはスクワット。これがしゃがみエクササイズ。しゃがんで取ったら、ゆっくり立ち上がって、ほす。
干すときに、天まで手を伸ばす。これはストレッチ。洗濯物は20枚あれば20回スクワットとストレッチをしたことになる。

これらの工夫は「ハードルが低く、習慣化しやすい」という点で、多くの人に適応可能です。
とりわけ高齢者や運動が苦手な人にとって、“挫折しない設計”がされているのが大きな利点です。

4. 個人的体験に基づく説得力
「自分自身が太ってしまい、忙しくて運動の時間が取れなかった」という長野氏の語りは、共感を呼びます。
こうした個人的な失敗体験からの発想が、聞き手にリアリティと希望を与えます。
85キロから63キロへの減量という結果は、数値としての説得力もあり、信頼性を高めています。

5,「ながらチャンス」という新しい視座の提供
長野氏が繰り返し語る「いつでもどこでもながらチャンス」という言葉は、運動を義務や修行ではなく、“遊び”や“日常の中の発見”へと変えるキーワードです。
「継続は力なり」「今がスタート」という励ましの言葉も、自己啓発的でありながら過剰なプレッシャーを与えず、ポジティブなモチベーションを喚起します。

6. 感想:日常が運動に変わる魔法の視点
このインタビューは、運動を“別枠の義務”から“生活そのもの”へと統合する、生活革命的な提案です。
洗濯や通勤といったルーティンが、少しの意識で自分を変える“ツール”になる──この着眼点は、現代人のライフスタイルにぴったりです。
そして何より、「継続できる喜び」が感じられる内容でした。
「もう遅い」はない、「今がスタート」という言葉に、年齢や体力に自信がない人でも勇気づけられることでしょう。