「中国で注目が高まるARグラス」李智慧(野村総合研究所エキスパートコンサルタント) ラジオ番組「マイあさ! 」マイ!Biz (NHK) を聞いて
2025年11月5日に放送されたラジオ番組「マイあさ! 」マイ!Biz「中国で注目が高まるARグラス」李智慧(野村総合研究所エキスパートコンサルタント)を聞きました。

1.中国でのARグラス活用の先進性
李氏は、ARグラスがすでに中国では実用化段階に入っている点を強調しています。
広州の交通警察による導入例は象徴的で、ナンバープレートをARグラスで確認し、通行許可を瞬時に判断できるという実務的な活用が紹介されました。
現場業務に密着した導入は、技術の定着を早める要因となります。
2. ユーザー体験の進化と課題の両面
かつてのARグラスにあった「重い・違和感がある・めまいがする」といった課題が、軽量化・快適性の向上によってかなり解消されつつあることが語られました。
音声操作によるハンズフリー性や、表示文字の視認性(緑色表示で風景と重なっても見やすい)といった具体的なUX向上が紹介されており、技術の成熟度を感じさせます。
高性能化と軽量化の両立、長時間駆動、チップ不足、スマホに代わるには価格・機能・バッテリー面でまだ課題があることにも触れられ、現実的な分析が光ります。
3. 多様な活用シーンの提案
ナビゲーション、博物館のガイド、工場での作業補助、医療手術、さらにはリアルタイムの音声通訳機能まで、李氏はARグラスがもたらす可能性を、多様な場面で提示しており、未来への期待感を広げているといえます。
同時通訳機能により「会話の8割が理解できた」というエピソードは、グローバルコミュニケーションを大きく変える可能性を感じさせます。
4. 市場と販売戦略の課題意識
機能的には注目されていても、現状ではスマホの代替にはなっておらず、販売チャネルが確立されていないという現実も冷静に言及。
従来のメガネ店では販売が難しいため、どのように消費者に届けるかという流通・普及戦略が次の焦点になると述べています。
5. 感想
李氏の解説は、ARグラスに対する単なる技術礼賛ではなく、「実用化が進んでいる現場」「課題を抱える市場」「未来への期待」という三層構造で構成されており、専門的でありながらリスナーにわかりやすく届ける語り口に好感が持てました。
ナビゲーションの矢印が空中に浮かぶ、医師が手を使わず情報確認できる、言葉がわからなくても相手の話を文字で読める——これらはすべて、私たちの「見る」体験そのものを変える可能性を示しています。
ARが現実とデジタルを自然につなげるものとして進化しつつあることが、放送を通じて深く伝わってきました。
最後に紹介された「日本のコンビニ大手による業務効率化の実証実験」は、中国に比べて出遅れていると言われがちな日本も着実に動き出していることを示す好例です。
国内での事例を併せて紹介することで、リスナーにとっての距離感を縮め、未来の技術が“遠くの話”でないことを印象付けました。
