「フィリーチーズステーキ」山本謙治(農畜産物流通コンサルタント) ラジオ番組「マイあさ!」全国食べものうまいもの(NHK) を聞いて
2025年10月19日に放送されたラジオ番組 『マイあさ!』全国食べものうまいもの「フィリーチーズステーキ」山本謙治(農畜産物流通コンサルタント)を聞きました。

1.フィラデルフィアのソウルフードとしての「フィリーチーズステーキ」
番組はまず、「フィリーチーズステーキ」がアメリカ・フィラデルフィアを代表するローカルフードであることを紹介します。
名前からは「チーズ」と「ステーキ」が主役であると連想されますが、実際には、鉄板で細かく刻んで炒めた牛肉を、パンに挟み、チーズやチーズソースをかけるというスタイルが特徴です。
この食べ方には、ファストフード的要素とアメリカの大衆文化が色濃く表れています。
2. 日本国内への展開とその意味
日本でもこのサンドイッチを提供する店が増えているという指摘は、食文化の国際交流とローカライズ(現地適応)の潮流を象徴しています。
専門店の登場や、既存のサンドイッチ店での提供は、アメリカンフードに対する日本人の嗜好の広がりを示しており、同時に「牛肉」「チーズ」「パン」といった食材のグローバルな価値を再確認する機会でもあります。
3. 肉のカット文化の比較:日本 vs アメリカ・ヨーロッパ
山本氏は、「薄切り肉」が日本の食肉文化に根ざしたスタイルであると指摘しています。
これは、「しゃぶしゃぶ」や「すき焼き」など日本の伝統的料理法に起因するものであり、包丁技術と調理文化の融合の産物です。
一方、アメリカやヨーロッパでは「塊肉」を基本としており、店頭でカットしてもらうスタイルが主流。
つまり、「フィリーチーズステーキ」のような薄切り肉を炒めて食べる料理がアメリカで生まれたこと自体が文化的に興味深いと番組は示唆しています。
4. 感想
山本謙治氏は「フィリーチーズステーキ」という、一見B級グルメ的なテーマから、「肉の切り方」という食文化の深層にある比較文化論に踏み込んでいます。
これは、単なる「グルメ紹介」にとどまらず、日米の食生活における価値観の違いを浮き彫りにする手腕として非常に秀逸です。
「薄切り肉文化」という日本の特色が、世界的にはいかに珍しいかを再認識できたことも大きな収穫でした。
今後、日本の薄切り肉を活かした新しいアレンジ「和風フィリーチーズステーキ」などが登場すれば、逆輸出的な文化循環として面白い展開が期待できそうです。
