「学び続ける力」片野温(日経クロスウーマン編集長) ラジオ番組「マイあさ!」 マイ!Biz(NHK) を聞いて
2025年10月14日に放送されたラジオ番組 「マイあさ!」 マイ!Biz「学び続ける力」片野温(日経クロスウーマン編集長)を聞きました。

1.社会構造と学び直しの必然性
放送ではまず、急速な技術革新や社会変動により、現代人に求められるスキルの「陳腐化の速度」が増していることが強調されていました。
たとえば、たった4年で知識や資格が時代遅れになるという指摘は、「学び続ける力」が今やサバイバルスキルとなっているという事実を象徴しています。
この背景には、定年延長、キャリアの多様化、そして労働市場の流動化があります。
特に女性がキャリアを継続し、リーダー層に進出する中で「自律的な学び直し」は重要なキーワードとなっています。
2. リスキリング vs 学び直し
番組内では、「リスキリング(企業主導)」と「学び直し(個人主導)」が明確に区別されていたのが印象的です。
リスキリング:主に業務上の必要性から、ITスキルやDX対応などを企業が提供。
学び直し:本人の意志で、新たな分野や興味に基づいてスキルや知識を再構築。
この区別は、学びの主体性を強調するものであり、特に中高年世代にとっては、キャリアの再設計だけでなく自己実現の手段としての意味合いが強まっていると考えられます。
3. 未来予測とスキルニーズの変化
2025年と2030年の「重要スキルランキング」の比較から、社会の価値観が「ソフトスキルからテックリテラシーへ」と急速に移っていく様子が示されました。
2025年上位スキル
1位 分析的思考力
2位 レジリエンス(柔軟性と迅速性)
3位 リーダーシップと社会的影響力
2030年上位スキル
1位 AIとビッグデータ活用
2位 サイバーセキュリティとネットワーク
3位 技術リテラシー
これは、技術理解がリーダーシップや適応力を凌駕する未来がすぐそこまで来ているというメッセージでもあります。
4. 実例から学ぶ:40代・50代の学び直しの成功物語
具体的な2人の事例が紹介され、リアリティと希望が伝わってきました。
30代半ばで学び直しを始め、41歳で大学院進学。
子育てと仕事を両立しながら自己再構築に成功した女性。
専業主婦25年から、韓国語ゼロスタートで51歳に字幕監修者となった女性。
毎日の継続、映像書き起こし、学習記録など学び方に工夫あり。
これらの事例からは、「年齢も過去の職歴も関係ない。行動と継続が変化を生む」という力強いメッセージが読み取れます。

5. 成功のための現実的アプローチ
番組では、単なる精神論で終わらず、成功のための具体的な工夫と戦略も紹介されました。
①計画性と可視化(家族のライフイベントも含めた学習計画)
②公的支援制度の活用(無料職業訓練)
③家庭内の協力(毎週日曜の家族会議)
④好奇心に従う第一歩(本やセミナーで火がつくことも)
これらは、現実的な学習障壁に対する有効な処方箋であり、多くの社会人にとって非常に参考になる構成でした。
6. 感想
本放送の最大の美点は、受動的な情報提供で終わらず、行動変容を後押しする構成にあった点です。
知識を届けるだけではなく、「このままでは空っぽになる」「まずは動いてみる」という切迫感と希望の両方を持った語り口は、多くのリスナーに共感と刺激を与えたに違いありません。
登場した女性たちのストーリーは、単なる「成功談」にとどまらず、苦労や工夫、再起に向けた粘り強さが具体的に描かれており、心を打ちました。
社会的役割や家庭との両立というリアルな問題を乗り越えた姿に、リスナーも「自分にもできるかもしれない」と思えるような力を感じたはずです。
「好奇心がくすぐられたら、そこから広がっていく」というメッセージは、学びを“義務”や“投資”と捉えるのではなく、喜びや探究心から始まる人間的な営みとして描いた点が印象的でした。
「学び続ける力」というテーマは、現代社会においては単なるキャリア論にとどまらず、生き方の根幹を問う重要な課題です。
本放送はその深みにまで触れつつ、具体的なヒントと励ましを与える貴重な内容でした。
この放送をきっかけに、自分自身の「学びの習慣」を見直す人が少なからず現れるのではないかと期待します。
そして、人生のどの時点からでも、人は再スタートを切ることができる──そんな普遍的な勇気を与えてくれる一編だったと高く評価したいと思います。
