「アメリカの抹茶人気」中川佐和子(アメリカ・ニューハンプシャー) マイあさ! 海外だより (NHK) を聞いて
2025年10月12日に放送されたラジオ番組 マイあさ! 海外だより「アメリカの抹茶人気」中川佐和子(アメリカ・ニューハンプシャー) を聞きました。

1.抹茶が「特別な文化体験」から「日常の選択肢」へ
かつては「禅」「茶道」「伝統文化」という文脈で語られていた抹茶が、アメリカでは今や「健康志向」「ライフスタイル」といった日常の中に自然に入り込んでいます。
特にコーヒーの代替飲料として、健康意識の高まりと共に受け入れられている点が注目されます。
「コーヒーの代わりに毎日抹茶を飲むようになって、体の調子が良くなった」「ストレスが減った」といった体験談が、リアリティのある訴求力を持って紹介されています。
2. Z世代が火付け役:ビジュアル文化と抹茶の親和性
SNSで映える「鮮やかな緑」、アジア文化に対する親近感、そして健康志向。
Z世代の特徴がすべて抹茶人気と一致しており、特にTikTokやInstagramといったビジュアルメディアとの相性の良さが、人気の拡大を後押ししています。
3. 健康成分への注目と自己管理意識
「カテキン」「緑茶ポリフェノール」「適度なカフェイン」といった機能性成分が紹介される記事が増えているのも、アメリカでの抹茶の定着を感じさせます。
パンデミック以降、特にZ世代は「心身のセルフケア」に高い関心を持つようになり、それが抹茶という選択につながっています。

4. 感想
このラジオ番組が素晴らしいのは、単なる「日本文化ブーム」の紹介ではなく、抹茶という伝統素材が、アメリカで新しい意味を与えられ再評価されていることを丁寧に描いている点です。
現代的なライフスタイルの中で再定義される抹茶の姿は、グローバル化とローカル文化の美しい融合とも言えるでしょう。
本格的に茶せんを使って抹茶を点てるコーヒーショップも出現しているという報告は、非常に興味深いです。
これは味覚や香りだけでなく、「丁寧に暮らす」という精神性までが輸出されている証拠。
一杯の抹茶が「少し立ち止まって、呼吸を整える」時間になるという点に、深い共感を覚えます。
このトレンドは、単なる嗜好品としての流行ではなく、日本文化そのものの魅力が世界で再評価されている象徴です。
アニメ、K-POP、タピオカと同じ文脈で、抹茶という素材が文化の媒体になっているという点に、日本発信の可能性を大きく感じます。
抹茶は、見た目の美しさ、健康機能、精神的な安らぎといった要素を通じて、Z世代の生活の中に深く入り込みつつあります。
この放送は、そうした「静かな革命」の現場を、臨場感をもって伝えてくれる貴重なレポートでした。
日本文化が、伝統の殻を破って再び世界に羽ばたいている——そのことを、優しく確信させてくれる内容でした。