「アフリカ難民課題にビジネスの力」毛利春香(国際部) 「マイあさ!」ワールドリポート(NHK)を聞いて
2025年10月9日に放送されたラジオ番組 「マイあさ!」▽ワールドリポート「アフリカ難民課題にビジネスの力」毛利春香(国際部)を聞きました。

ウガンダ
1. 番組の主題と問題意識
このリポートの核心は、「人道支援」から「自立支援」への転換です。
ウガンダやエチオピアなど、長年にわたり多くの難民を受け入れてきた国々で、「ビジネスの仕組み」を活かして難民自身が働き、技術を学び、収入を得る取り組みが広がっていることを紹介しています。
難民を「保護される対象」ではなく、「社会の担い手」として捉え直す視点が際立っています。
2. ウガンダの取り組み:電子廃棄物の再生
ウガンダで紹介されたビジネスは、廃棄された電化製品を修理・再利用するという、環境と雇用を両立させるモデルです。
捨てられた部品から太陽光ランタンやラジオを修理し、低価格で提供。
これにより、
①難民が技術を学び、収入を得る
②地域の電化製品普及を促進
③電子廃棄物の削減にも貢献
といった三重の社会的価値を実現しています。
この仕組みは、単なる援助ではなく、「循環型社会」と「人的成長」の結合という先進的な発想を体現しています。
3. エチオピアでの「ソーラーシェアリング」モデル
さらに注目すべきは、太陽光発電と農業を組み合わせたソーラーシェアリングです。
日照が長いエチオピアの特性を活かし、太陽光パネルの下で大豆を栽培しながら電力を供給する。
この「光と影の共存」モデルは、
①エネルギーの自給
②難民の雇用創出
③農作業環境の改善(暑さの軽減)
という三方良しの成果を生みます。
自然の恵みを「遮る」のではなく、「共に活かす」発想が、アフリカの太陽のもとで力強く展開されているのです。

エチオピア
4. 日本とのつながり:JICAと大阪の挑戦
番組では、大阪で開かれた難民支援ビジネスコンテストにも触れています。
これは、アフリカでの経験や課題を「日本の知恵」と掛け合わせる取り組みであり、
JICA(国際協力機構)が現地支援や人材交流を担うことで、官民協働の国際的支援ネットワークが形成されています。
日本の地域都市が、地球規模の課題に創造的なビジネスで関わる姿勢を見せている点は特筆に値します。
5. 感想
この番組は、絶望の象徴とされがちな「難民問題」に対し、希望を見いだす視点を提示しています。
それは慈善ではなく、「経済活動を通じた尊厳の回復」。
ビジネスという中立的で現実的な力を、人間の尊厳を支える道具として再定義している点が極めて現代的です。
経済が“搾取”ではなく“共生”を生むものになりうる、という希望のメッセージが鮮やかに響きました。
これまでの国際協力は、どうしても「与える側と受け取る側」の非対称性を含んでいました。
しかしこのリポートでは、難民自身が主体者となり、事業を「運営する側」に回る。
そこにあるのは、「助ける」ではなく「共に立つ」というパラダイム転換です。
この変化こそ、SDGsの理念が実際の社会に根付いていく過程を示しています。
大阪という地域が、国際協力の「入口」として紹介されたことも印象的です。
ローカルな都市がグローバルな課題に関心を寄せ、創造的なビジネスを構想する。
これはまさに、「グローカル(Glocal)」の実践例であり、日本の地域が世界とつながる新しい形を示しています。