「航空物流の新たな可能性とは」西藤真一(桃山学院大学教授) マイあさ! (NHK) を聞いて
2025年10月6日に放送されたラジオ番組 マイあさ! マイ!Biz「航空物流の新たな可能性とは」西藤真一(桃山学院大学教授)を聞きました。

1.航空物流の特性と市場動向
番組は、航空物流の本質を「軽く・高価・迅速性が求められる物品」に適した手段として位置づけています。
半導体、医薬品、生鮮食品といった付加価値の高い品目は、多少コストが高くても、スピードと確実性を重視するグローバルサプライチェーンにおいて不可欠です。
特に、AI関連の半導体の需要増加が、航空貨物の輸送量を押し上げているという点は、産業構造の変化を象徴しています。
2. 経済成長と地政学的リスクが後押しする「三つの追い風」
航空物流の拡大を支える要因として、以下の三点が挙げられていました:
①南アジア・東南アジアの経済成長:とくにインドの台頭は、新たな物流需要を創出しています。
②サプライチェーンの多様化:パンデミックや地政学リスクへの対応として、調達先の分散化が進行。航空便の柔軟性と即応性が評価されています。
③イーコマースの爆発的成長:小口での高頻度出荷が主流となり、航空便の重要性がますます高まっています。
この三要因は相互に連動しており、「成長市場への即応」「多拠点供給の統合」「消費者への迅速配達」という観点から、航空物流を国家インフラとして捉え直す意義を示しています。
3. 日本の空港再編とエアポートシティ構想
番組は、成田・羽田の一体的活用や、貨物施設の集約、保税地域の統合による効率化など、空港機能の強化策にも光を当てています。
これは単なる「空港の整備」ではなく、「空港を中心としたまちづくり=エアポートシティ」の構想に繋がっています。
①成田空港の滑走路延伸とターミナル統合
②貨物導線の効率化による迅速な通関と配送
③保税地域の統合による貿易拠点の機能強化
④生鮮品輸出・流通加工・メンテナンス機能の集約
これらの取り組みは、単なるインフラ整備を超え、地域経済の活性化、雇用創出、国家戦略レベルの競争力強化へと繋がる未来志向のビジョンを感じさせます。
4. アジアのハブとしての日本の再定義
日本が単なる“日本発着の物流拠点”から、“アジアと北米を結ぶトランジット拠点”へと脱皮する構想も語られていました。
韓国や香港のように、貨物の中継拠点として存在感を発揮している国々に対抗すべく、羽田と成田の連携強化が鍵となるという指摘は重要です。

5. 感想
この番組の素晴らしさは、航空物流という一見専門的でニッチなテーマを、グローバル経済・地政学・都市政策・デジタル経済など、多角的な視点から統合的に描き出していた点にあります。
統計(ボーイング予測・金額ベースの輸出比率)と現実(JAL・ANAの施策)を結びつけた構成が明快で、わかりやすい。
経済成長だけでなく、“不確実性への対応”としての航空物流の意義を打ち出しており、現代的な文脈を感じさせます。
単なる空港インフラの整備でなく、“地域と国家の再構築”として語られている点が非常に意欲的である。
この番組を聞き終えて、航空物流は単なる“モノを運ぶ手段”ではなく、“人と社会と経済をつなぐ希望の道”であると感じました。
エアポートシティ構想や成長国との連携は、「日本はこれからも世界とつながることができる」という前向きなメッセージでもあります。
また、物流の最前線に立つ空港という存在が、単なるインフラから「人が働き、暮らし、交流する都市」へと変貌していく過程に、未来の都市像を見る思いがしました。