ラジオ深夜便 心に花を咲かせて「サボテン」(NHK) を聞いて
2025年9月24日に放送されたラジオ番組 ラジオ深夜便 心に花を咲かせて「サボテン」を聞きました。
この放送では、サボテンを「観賞用」や「砂漠の象徴」といった既存のイメージにとどめず、農業資源・エネルギー資源・地域資源として見直そうとする動きが紹介されていました。ポイントを整理すると――

1.研究の現場性
「現場に行くのが大事だよ」という言葉は、机上の学問ではなくフィールドに足を運び、実際に育てて確かめる重要性を示しています。
サボテンの適応力や弱点(水や寒さへの耐性)は、観察と実験を重ねて初めて掴めるものです。
2. 食用・飼料としての可能性
日本で「サボテンを野菜にしてしまおう」という発想は、食糧自給や気候変動下の農業に直結します。
特にウチワサボテンは食用化の歴史があり、耐寒性を持つ種類の探索も進んでいる。
夏の高温で従来の野菜が作れなくなるリスクを補う「保険作物」として注目できます。
3. 炭素循環と環境的役割
サボテンが枯れても土中に二酸化炭素を残すという話は、炭素固定の観点から興味深いです。
森林資源が火災で失われやすいのに対し、サボテンは「火事にならない」特性を持ち、水分を多く含むゆえに防災植物としての役割も期待できそうです。
4. 地域づくりとの連携
春日井市の「サボテンの町」や、サボテンをテーマにした祭り・公園は、文化と観光資源としての広がりを示します。
研究者・自治体・企業が横断的に連携することで、単なる農業技術を超えて「地域ブランド」としてのイノベーションが生まれているのが印象的です。

5. 未来への応用展開
食用・飼料だけでなく、エネルギー事業への応用(バイオマスや炭素固定資源としての可能性)まで議論されている点は、まさに研究から社会実装へと発展する過程を感じさせます。
6. 感想
この番組は、サボテンを「珍しい植物」から「社会を変える可能性のある資源」へと視点を広げて紹介している点で優れています。環境問題・農業問題・地域振興という一見別々の課題をサボテンが結びつけるという語り口は、聴く者に未来への希望を抱かせます。さらに、研究者の現場感覚(「現場に行くのが大事だ」)を強調していたのも、机上の空論に終わらないリアリティを感じさせました。
この番組を通じて、サボテンを「乾燥地に立つ孤高の植物」としてではなく、人と社会をつなげる媒介として捉え直しました。乾燥に強いだけでなく、炭素を保持し、食料にもなり、火事にも強いという多機能性は、まるで「未来のインフラ植物」のようです。さらに、それが研究者・自治体・企業・住民をつなぎ、文化や祭りにまで発展していく姿に、サボテンの「生命力の拡張」を感じました。単なる植物を超えて、社会的な共創を象徴する存在として描かれた点に、大きな感動を覚えました。