マイあさ!  マイ!Biz「トランプ関税下 非製造業の時代へ」(NHK) を聞いて

2025年9月22日に放送されたラジオ番組 マイあさ!  マイ!Biz「トランプ関税下 非製造業の時代へ」を聞きました。

1.経済統計と生活感覚のギャップ
番組がまず「名目GDPは635兆円で好調」「でも家計部門は物価高で苦しい」と整理していた点は、とても説得力があります。
数字の世界と生活実感がズレるところに、日本経済の“二重構造”が見えてきます。
これは統計だけでは読み取れない生活者のリアルを強調した重要な指摘ですね。

2. 製造業から非製造業への転換
かつては「製造業が伸びれば非製造業も伸びる」という伝播関係があったのに、21世紀以降はそのリンクが弱まり、非製造業が独自に動くようになった。
ここは歴史的に非常に示唆的です。
2008年のリーマンショックや2011年の震災を境に、日本経済の主役が「輸出製造業」から「内需・サービス業」にシフトしてきたことが、データと事例で裏付けられています。

3. 円安メリットの変容
円安で得をしたのが製造業ではなく、観光や飲食、小売、不動産、情報サービスといった非製造業だった、というのは非常に分かりやすい切り口です。
インバウンドの急増を具体的な数字で示したのも説得力大です。
観光客数が2011年の621万人から、コロナ後の2024年には3687万人へと6倍近く増加しているという事実は、日本経済の新しい「成長ドライバー」を直感的に示しています。

4. 「ものづくり」から「ことづくり」へ
地方で観光や農業、さらにはスポーツやエンタメが重要になっているという話は、日本社会の変容を非常にうまく表現しています。
「遊ぶこと」や「体験を共有すること」までを経済活動として認識する視点は、従来の経済論評にはあまりなかった新しさがあります。
特に「非製造業はコアが見えにくい」という難点をあえて指摘しながら、それでも未来の中核になると語っているところに誠実さを感じました。

5. 感想
この番組の強みは、「統計」「歴史」「実感」の三つをバランスよく組み合わせて、日本経済の構造変化を立体的に描いた点です。
単なる数字の読み上げではなく、リーマンや震災、アベノミクス、コロナといった具体的事件を軸にしているので、聞き手も「なるほど」と腑に落ちやすい。
さらに観光やエンタメといった生活に直結する分野を経済論に組み込むことで、難しい話がぐっと身近に感じられる構成でした。

私はこの放送を聞いて、「日本経済は製造業頼みから解放されてきたんだな」と前向きに感じました。
もちろん課題は山積みですが、観光やスポーツ、エンタメといった“ことづくり”の分野には、人々の生活の楽しみや幸福感をダイレクトに広げる力があります。
これまで「稼ぎ頭=輸出製造業」という固定観念が強かった分、日本社会は少し息苦しさを感じてきたかもしれません。
でも今は「楽しむ」「集まる」「体験を分かち合う」ことそのものが新しい経済の核になる。そう考えると、日本経済はむしろ豊かさの質を高める方向に進んでいる、と希望を持てます。