ラジオ深夜便 ワールドネットワーク 「ロサンゼルスのゴミ拾いの活動」(NHK) を聞いて
2025年9月10日に放送されたラジオ番組 ラジオ深夜便 「ロサンゼルスのゴミ拾いの活動」を聞きました。

1. 孤独から始まった「社会的つながり」への転換
この活動の原点は、2019年に引退した一人の人物が「自分には本当に友達がいない」と気づいたことでした。
ここから、孤独感を埋めるためにSNSを通じて呼びかけたことが、やがて数千人規模の非営利団体へと成長しました。
ここには、「個人の小さな気づき」が「地域社会の大きな変化」へと発展するプロセスが鮮明に示されています。
孤独の解消と地域課題(ゴミ問題)の解決が重なり合っている点は、とても象徴的です。
2. 日常的で具体的な実践
活動は毎朝8時に集合し、黄色いベストを着て2時間かけて2キロ範囲を清掃するというシンプルかつ継続的な営みです。
使う道具(ゴム手袋、大きなゴミ袋、トング)も誰にでも手に入るものであり、活動のハードルが低いことが、参加の裾野を広げています。
拾われるゴミが「タバコの吸い殻」「紙皿」「スナックの袋」といった身近なものばかりであることも、都市生活の現実を具体的に浮かび上がらせています。
3. 活動後の「交流の場」としてのコーヒーショップ
清掃後にコーヒーショップで会話を楽しむ習慣があり、単なる作業で終わらず、社会的交流の場を兼ねている点が注目されます。
ここで友情や絆が育まれ、参加者にとって「生き甲斐」へとつながっていく。まさに「場づくり」の知恵です。
4. 高齢者の社会参加と生き甲斐形成
参加者の多くは60代から80代の退職者。
退職後の「空白」を埋め、社会とのつながりを回復する場として、この活動は大きな役割を果たしています。
日本の「生涯学習」「地域ボランティア」とも共鳴する部分があり、高齢化社会における普遍的な課題解決のヒントを示しているといえます。

5. 個人の幸福感と地域の環境改善の相乗効果
活動の成果は「町がきれいになる」ことだけでなく、参加者自身が「気分がよくなる」「満足感が得られる」という内面的な効果にも現れています。
外的環境の改善と内的幸福感の向上が同時に達成される点に、この活動の持続可能性があります。
6. 感想
この話を聞いて強く感じたのは、「小さな行動が人生をも、街をも変える」ということです。
孤独を解消したいという個人の願いが、やがては街の清潔さや市民の心の健康に寄与する大きな波紋を生んでいる。
また、日本の地域活動や高齢者の居場所づくりにも直結するヒントを与えてくれます。
「清掃」という普遍的な行動を媒介に、人と人、人と地域が再び結びつく姿は、どこの社会にも必要とされるモデルでしょう。
そして何より印象的なのは、参加者が口を揃えて言う「とにかく気分がよくなる」という言葉です。
社会に役立つだけでなく、当人が心身ともに元気になる。その「双方向の幸福」が、この活動の魅力を支えていると感じました。