マイあさ! マイ!Biz「TICAD=アフリカ開発会議の成果」(NHK) を聞いて

2025年9月11日に放送されたラジオ番組 マイあさ! マイ!Biz「TICAD=アフリカ開発会議の成果」を聞きました。

1.「援助」から「投資」へ——パラダイムシフト
今回の第9回アフリカ開発会議では、かつての「開発援助(ODA)」を主軸とした支援モデルから、「対等なパートナーシップによる投資・共創」への明確な転換が見られました。
この姿勢の変化は、日本の外交・経済戦略の成熟と、アフリカ諸国の経済的自立志向との一致によって可能となったものであり、「一緒に成長する」というキーワードは、その象徴的表現と言えます。
特に、日本の技術や資金だけでなく、アフリカの若者・女性をエンパワーし、社会の底上げを支援する点が注目されます。

2. 実効性のある成果——署名文書数324件(前回の3倍以上)
成果物としての署名文書数が前回の92件から324件へと飛躍的に増加したことは、会議の具体性と参加者の真剣度を裏付ける事実です。
これらの文書には、AI人材育成、再生可能エネルギー、鉱物資源、インフラ、ヘルスケアといった重要テーマが含まれており、今後の協力の指針として期待が持てます。
特にAI人材育成に日本が関与することで、単なる雇用創出だけでなく、イノベーションの地産地消、つまり「アフリカ発イノベーション」に貢献する意義は大きいでしょう。

3. 展示会の熱気——文化交流の新たな起点に
ジェトロの展示ブース、アニメ・ゲーム体験コーナーなど、日本の「ソフトパワー」がアフリカ諸国の参加者の関心を集めていた点も興味深いです。
太鼓のゲームを体験する様子からは、単なる物理的な技術交流を超えた「情緒的な橋渡し」が行われていたことがうかがえます。
これは、日本にとって、アフリカ諸国の人々との感情的・文化的なつながりを築く絶好の機会であり、「経済を超えた友人関係」の基盤づくりにつながっています。

4. 感想
このラジオ番組は、単なる会議報告ではなく、日アフリカ関係の過去と未来の「転換点」を的確に捉え、分かりやすく伝えています。
「援助から投資へ」「ビジネスから友人へ」という2つの流れを軸に、外交戦略の深層に光を当てていた点は非常に評価できます。
また、展示会やゲームコーナーに触れたくだりでは、堅い外交会議の印象を和らげるだけでなく、「文化が外交を滑らかにする」ことを直感的に伝えており、一般聴取者の理解を助けています。

TICAD9を通じて印象に残るのは、「ともに成長する」という姿勢の確立です。
これは、どちらかがどちらかを助けるという上下の構造ではなく、「共に学び、共に築く」という成熟した関係性への移行を象徴しています。「いざという時に脆いのはビジネスだけの関係」という指摘は非常に示唆的であり、日頃の信頼醸成こそが危機を乗り越える力になる、という外交哲学が滲み出ていました。

また、TICADを通じた取り組みがアフリカにとどまらず、「日本への逆輸入」すら見据えた未来志向であることに、グローバル社会における共創のビジョンを感じました。地熱発電、太陽光、デジタル医療、交通管理など、SDGsに直結する分野での協業は、単に発展途上国支援の枠を超え、世界全体の課題解決へと接続していく力強さがあります。