「マイあさ!」 健康|老いを受けとめ 日々を楽しむ|「もの忘れ」にあらがう を聞いて
2025年9月10日に放送されたラジオ番組 「マイあさ!」 健康|老いを受けとめ 日々を楽しむ|「もの忘れ」にあらがう を聞きました。

1.人とのつながりが脳を守る:社会性の力
本番組は、「人とのつながり」が記憶を司る脳の部位「海馬」の萎縮を防ぐ鍵であると強調しています。
これは近年の脳科学の研究成果にも裏打ちされた主張であり、多世代交流や対話の継続が脳への刺激を生み、孤立を防ぐことが認知症予防につながるというメッセージは、非常に実践的かつ社会的意義のある提言です。
また、「一人暮らしでも人とのつながりがあれば問題ない」と述べた点は、都市生活者や高齢単身世帯に対する希望のある視点であり、老いに向き合う心構えに安心感を与えます。
2. 注意分割機能のトレーニングとしての生活行動
「火加減を見ながら野菜を切る」「相手の様子を見ながら会話をする」といった日常の行動を通して、「注意分割機能」(マルチタスクの能力)を自然に鍛えられるという指摘は興味深いものです。
これは「生活そのものがトレーニングになる」という発想であり、高齢者にとって無理のない認知トレーニングを提案している点で評価できます。
3. 聞こえのケアは脳のケア:補聴器の活用推進
「聞こえの悪さを放置しない」という呼びかけは極めて重要です。
難聴が認知機能の低下を招くという医学的知見を紹介しつつ、補聴器の進化(高性能・小型化)や自治体の補助制度まで言及している点は、情報提供として非常に丁寧です。
補聴器を利用することが「恥」ではなく「積極的な脳の健康管理」であると印象づけており、高齢者の心理的な抵抗感の払拭にも寄与する内容です。
4. 会話は最高の脳トレ:相手理解と思考の複合活動
番組では、会話とは単なる情報のやりとりではなく、相手の意図を読み取り、返答を考え、表情を読み取る高度な知的活動だとしています。
これは、日常の中にある高度な認知活動への気づきを促すものであり、何気ない日常に価値を見出させる哲学的な深みを持った視点です。
さらに、「相手に興味を持ってもらえるように表現を工夫する」という言葉からは、他者と関わる積極性と創造性を引き出す姿勢も感じられます。

5. コグニサイズ:日常と運動の融合による脳活性化
「計算をしながら段差を上り下り」「複雑なしりとりをしながら散歩」など、身体運動と知的活動を組み合わせた「コグニサイズ(cognicise)」の紹介も効果的でした。
このアプローチは、「特別なことを始める」よりも、「普段の生活の中で無理なく続けられる工夫」として提示されており、習慣化しやすいヒントを視聴者に与えてくれます。
6. 感想
この番組は、「もの忘れ」という誰にでも訪れる課題に対し、明るく建設的な視点で向き合える手がかりを与えてくれました。
医学的知見と日常生活の行動をうまく接続しており、専門性と親しみやすさのバランスが非常に優れている。
単なる「注意点の羅列」ではなく、「人との関係性」や「生活の豊かさ」への言及を通じて、心理的・社会的ウェルビーイングにも目を向けている点は高く評価できます。
「老いを受けとめ、日々を楽しむ」というテーマにふさわしく、希望を持って生活と向き合えるような提案の数々が、視聴者の前向きな姿勢を育てる内容となっています。