「マイあさ!」 マイ!Biz「変わる農業組織」(NHK) を聞いて

2025年9月2日に放送されたラジオ番組 「マイあさ!」 マイ!Biz「変わる農業組織」を聞きました。

今回の番組「マイあさ!」マイ!Biz「変わる農業組織」では、農業経営の現状とその組織形態の進化について非常に体系的に整理されていました。
特に「集落営農」を1階・2階・3階建ての構造にたとえて説明した点は、理解を助ける秀逸な枠組みでした。

1階(公益的機能)
 農地の利用調整や草刈り、水路の掃除といった地域維持機能を担う部分です。
これは農業が単なる生産活動にとどまらず、地域社会の基盤を守る「インフラ的役割」を担っていることを示しており、農業の公共性を浮き彫りにしています。

2階(生産・加工・販売機能)
 従来の農業経営の中心であり、集落営農が特に力を入れてきた部分です。
共同で高額な農機具を導入し、個人では難しい加工・販売にも取り組んできました。
しかし、番組が指摘するように高齢化や人手不足により、この2階の基盤が弱まりつつある現実は大きな課題です。

3階(広域連合・法人連携)
 注目すべきは、この新しい「3階」構想です。
複数の集落営農がさらに連携して法人連合を形成し、大規模農地を効率的に活用する。機械の共同利用やICTによる連携、人材育成など、これまでの小規模単位では不可能だったスケールメリットを追求している点が、未来志向の動きとして際立っています。
地域全体を「ひとつの大きな営農法人」とみなす発想は、日本の農業が直面する構造問題を打開する可能性を秘めています。

「建物の階層」に例えた説明は、農業組織の進化を段階的に理解できる優れた比喩です。
リスナーに「農業の組織化がどのように広がっていくのか」を直感的に伝えることに成功しています。
 高齢化・担い手不足という深刻な現実を隠さず提示しつつも、それに対抗する「3階建てモデル」の希望を強調する構成は、問題提起と解決志向がバランスよく配されていました。
ICTやJAとの連携、人材育成を重視し、農業を「地域経済のシステム」として捉える考え方などは、農業を未来産業へと位置づける意欲的な姿勢を感じさせます。

この番組を通じて、農業は単に「食料を生産する仕事」ではなく、「地域社会を維持し、将来の産業基盤を築く組織的営み」であることを強く感じました。
特に印象的だったのは、「組織として魅力がなければ人は入ってこない」という指摘です。
これは農業だけでなく、あらゆる産業や地域社会の共通課題でもあり、魅力ある組織づくりが持続可能性の核心であると納得させられました。

また、農業が地域全体を巻き込む「共同体的経営」へと進化している姿は、縮小社会の中で日本の地方がどう生き残っていくかを考えるうえで重要なヒントになると感じました。
今後、この「3階建てモデル」がどこまで現実に定着し、若い世代を引きつけられるのかに注目したいと思います。