マイあさ! “聞きたい” 「南海トラフ地震臨時情報 どう活かす」(NHK) を聞いて

2025年9月1日に放送されたラジオ番組 マイあさ! “聞きたい” 「南海トラフ地震臨時情報 どう活かす」を聞きました。

1.南海トラフ地震「臨時情報」発表の意義とその影響
2023年8月8日、初の「南海トラフ地震臨時情報」が発表され、一週間にわたって注意喚起が行われました。
この初の試みによって、日本社会がどのように反応するかが試されることになりました。
消費者の行動:水・米・カップ麺の買い占めなど、「パニック的購買行動」も見られた。
社会・経済活動への影響:旅行中止、イベント中止、海水浴場閉鎖、新幹線の一部運休など。

ここでは「情報の曖昧さ」による混乱が課題となった反面、それぞれの判断が試されたという点で、社会の「自律性」が問われた重要な局面だったといえます。

2. 行動変容とその限界:臨時情報の波及効果
情報を「見聞きした人」は全体の8割。そのうち7割以上が不安を感じた。
しかし実際に「備蓄や避難の再確認などの行動」に移した人は、備蓄の再確認は、2割であり、家具固定、避難経路確認は、1割未満である。

この結果から浮かび上がるのは、「不安」はあっても、「行動」にはつながらない人が多いという“防災における行動ギャップ”です。
一方、元々備えていた人は、より一層確認する行動をとったという点から、「防災習慣の有無」による二極化が如実に現れたといえます。

3. 社会の対応力:行政・企業・地域の連携の進展
政府や自治体、企業が「臨時情報」を契機に対応策の明確化を進めた点は評価に値します。
内閣府は「行動チェックリスト」を公開し、啓発の強化を試みている。
鉄道・イベント主催者の対応方針が見直され、原則運休しない/イベントは備えの上で実施という「新たな標準」が整備されつつある。
2年前に、民間企業との連携が試みられた。
その時、小売・保険・ハウスメーカーなど100社以上が協力を表明した。これが今後にヒントになります。

4. 具体事例の示唆:徳島市「阿波踊り」の好例
2023年の阿波踊りは、安全対策を徹底した上で予定通り開催した。
地元住民・踊り手・観光客が「共に避難する」計画を策定した。
2025年の計画では、ドローンによる避難誘導の導入まで検討した。

このように「防災 × 地域文化 × テクノロジー」を融合させた取り組みは、今後の地域防災のモデルとして非常に参考になります。

5. 情報の「当たり外れ」ではなく「受け止め方」の変革へ
最後に強調されたのは、「臨時情報」は当たるかどうかではなく、どう活かすかが問われている。
臨時情報は「未来を変えるきっかけ」。一人ひとりの備えが、「社会の安全性」を底上げする。
これはまさに、「受け身の防災」から「参加型の防災」への転換を意味しています。

6. 感想
この番組は、不安を煽るのではなく、備えを促すための“冷静な視点”を提供していた点が大きな価値です。
特に以下の点を高く評価できます。
①臨時情報の限界だけでなく、その存在意義をきちんと再評価していたこと。
②「行動変容」に関する実証的なデータ分析(8割視聴→2割行動)を紹介し、問題の所在を明確にしたこと。
③民間と行政の連携による現実的な改善の兆しを具体的事例(阿波踊り)で示したこと。
④単なる「知識の提供」ではなく、「どう行動につなげるか」という実践的な問いを投げかけていたこと。

この番組は、「臨時情報」という一見あいまいなものに、どう実効性を持たせるかという大きな問いを投げかけるものであり、防災を自分事として考える契機を与えてくれました。
これからの社会に求められるのは、「情報の活用力」、つまり、情報を読解し、判断し、行動につなげる力なのだと痛感しました。