マイあさ! マイ!Biz「賃上げの実態」(NHK) を聞いて
2025年8月26日に放送されたラジオ番組 マイあさ! マイ!Biz「賃上げの実態」を聞きました。

厚生労働省の審議会は最低賃金を時給で平均63円引き上げるという今年度の目安を示しています。
目安通りに引き上げられると、全国平均は1118円となって、全ての都道府県の賃金が1000円を超えることになります。
特に青森・沖縄・佐賀といった地域での上昇率の高さは、単なる全国一律の動きではなく、地域固有の要因(人口減少や人手不足)と結びついていることを示しています。
急速に高齢化が進む地域ほど、生活支援型のサービス産業(介護、福祉、運送、清掃等)が多く、人手不足が深刻です。
そこでは、「賃金を上げないと人が来ない」という切実な実情があり、賃金上昇が景気の好循環によるものではないという視点は、極めて現実的で誠実な観察です。
製造業よりもサービス業が強い地域ほど、賃金が上がっているという指摘も経済構造の地域間差を明確に示すデータ分析です。
中小企業の社長たちから「M&Aが増えた」との声が紹介されましたが、これは単なる資本の論理ではなく、「人がいないから会社を売るしかない」という現場の苦渋が背景にあります。
技能継承の難しさと、後継者不足による淘汰が進む中、賃上げはもはや「攻め」ではなく「生き残り」の戦略となっているのです。

少額から始められる投資やソフト導入を通じて、生産性向上=人手不足対応=利益確保という流れが明示されました。
このように、人材確保と収益性を同時に追求する企業が、結果的に賃上げも可能にしているという実例紹介は、経営戦略としての示唆に富んでいます。
この番組は、「賃上げ」を単に賃金統計の数字で語るのではなく、人口動態・産業構造・企業経営の現場感覚と結びつけて解説している点が秀逸です。
特に「青森や沖縄といった地方でなぜ賃金が伸びているのか」という具体的事例を示すことで、リスナーが自分の生活や地域と重ね合わせやすくなっています。
また、「やむを得ず」という消極的な賃上げの要因を明示しつつも、最後には「稼ぐ力を高めた企業が利益を上げている」という前向きな事例で結んでおり、現状認識と希望のバランスを取っています。
これは、単に危機感をあおるのではなく、変化の中での可能性を示す報道姿勢として評価できます。