マイあさ! “聞きたい”「国際エネルギー市場とサウジ」(NHK) を聞いて
2025年8月25日に放送されたラジオ番組 マイあさ! “聞きたい”「国際エネルギー市場とサウジ」を聞きました。

1.国際エネルギー市場の揺らぎと地政学的要因
本放送は、過去数年間の原油価格の変動要因を明確に整理しており、特に以下の3点が興味深いポイントです。
①ロシアのウクライナ侵攻(2022年)による市場の急激な高騰
②トランプ政権下の関税政策が引き起こした経済不安と需要減退
③中東(イラン・イスラエル)情勢の緊張と停戦が価格に与える影響
これらはエネルギー価格が単なる供給量や在庫ではなく、政治的・軍事的緊張によって大きく揺れる市場であることを改めて示しています。
2. サウジアラビアの「生産調整力」という地政学的武器
サウジアラビアは、最大級の余剰生産能力(約230万バレル)を保有しており、これは「油の中央銀行」とも言える圧倒的なポジションです。
特筆すべきは、これをただの「安定供給」ではなく、「価格統制と制裁の手段(ショック療法)」として使う能力にまで言及された点です。
これは、産油国同士の足並みが乱れた際に、あえて価格を下げて市場から排除する強硬策も取れるという、まさに覇権国家的なリアリズムを感じさせます。
3. 日・サ関係の戦略的補完性
本番組では、サウジと日本の関係が「ただの輸出入」ではない、戦略的パートナー関係であることが強調されました。
日本にとって:安定供給を担保する不可欠な存在
サウジにとって:確実に買い続けてくれる信頼ある顧客
さらに、経済の多様化(脱石油依存)を目指すサウジに対して、日本の技術・投資が協力国として貢献できるという視点が加えられており、これは非常に重要な提起です。

この解説は、原油市場の構造、地政学、経済戦略、そして日本外交と、多角的に視野を広げており、限られた時間のラジオ番組としては秀逸な構成力を感じさせます。
小山堅氏の冷静かつ簡潔な語り口も、専門知識をリスナーが「実感」をもって理解できるような工夫がなされており、教育的な意義も高いと感じました。
特に「協調減産」や「ショック療法」の話題は、市場の力学と政治戦略の接点を示しており、興味深い学びの機会となりました。
この放送は、サウジアラビアという国が単なる産油国ではなく、戦略的資源を用いて世界経済と外交の両方に影響を及ぼす存在であることを鮮やかに示してくれました。
また、「石油を買う」だけではなく、「パートナーとしてともに未来を築く」という視点を、日本のリスナーに気づかせてくれる内容だった点は特筆に値します。
今後、日本がどのようにして脱炭素とエネルギー安全保障のバランスを取るのかというテーマにおいても、このような対話が重要になると感じました。