マイあさ! ワールドアイ ロンドン「風呂敷のワークショップ」(NHK) を聞いて
2025年8月27日に放送されたラジオ番組 マイあさ! ワールドアイ ロンドン「風呂敷のワークショップ」を聞きました。

1.ハロッズという舞台設定の意義
ロンドンの象徴的な老舗デパート「ハロッズ」で開催されたこと自体に、大きな意味があります。
ハロッズは世界的な観光スポットであり、商品力だけでなく「文化的な権威」を帯びた場です。
ここで風呂敷が紹介されたことは、単なる販促活動ではなく、日本の伝統文化を国際的に権威ある空間に載せることで、その価値を普遍的に広げる行為だと言えます。
2. 風呂敷とサステイナビリティの接点
イギリス社会で高まる「エコ」「サステイナブル」という価値観に、風呂敷が巧みに接続されています。
風呂敷は本来「再利用可能」という特徴を持っており、それが現代的な環境意識に自然に合致する。
ここに「伝統が新しいものになる」という逆説的な魅力があります。つまり、過去から受け継がれた日本の生活文化が、現代世界の課題に対する一つの解決策として再発見されているのです。
3. ワークショップの構成の巧みさ
ギフトを桐箱に入れ、風呂敷で包み、それを持ち帰るという流れは、五感をフルに使った体験型マーケティングです。
単なる商品説明ではなく「包む体験」そのものを提供し、参加者自身の手で完成させる達成感を演出している。
さらにインフルエンサーを招き、ブランチタイムに組み込むことで、文化体験とライフスタイルを結びつける戦略性も感じられます。

4. 多様な受け手への配慮
参加者の中には風呂敷に全く触れたことのない人もいた。
そのため「説明は簡潔に」「カジュアルに見せる」「実演で魅せる」という工夫をしている点が重要です。
これは異文化紹介の基本ですが、形式張らず「一枚の布で次々と変化する楽しさ」を提示したことで、理解と関心が段階的に高まったと伝えられています。
5. 感想
私は、このワークショップが「伝統の輸出」ではなく「伝統の再解釈」として機能している点に深く感銘を受けました。
風呂敷は日本人にとってはどこか懐かしい実用品ですが、ロンドンの人々にとっては「エコで美しい新しい発見」として映る。その視点の差こそが文化交流の豊かさです。
また、ギフトを通して「包むこと」が体験される構成は、消費社会の中で忘れがちな「贈る心」を再確認させるものにも思えます。
包むことは相手を思う行為であり、布の柔らかさや繰り返し使える持続性が、その精神性をさらに強調しています。
この試みは、単なるイベントにとどまらず、日本文化の「静かな革新力」を世界に示すモデルケースといえるでしょう。