マイあさ!  「変わる中国の住宅事情」(NHK) を聞いて

2025年8月22日に放送されたラジオ番組 マイあさ!  「変わる中国の住宅事情」(NHK) を聞きました。

この放送で強調されていたのは、中国に長く根付いてきた「住宅価格は必ず上がる」という神話が崩壊しつつあることです。
これまでは結婚の条件として新郎が住宅を用意するのが常識であり、持ち家信仰が強固でした。
ところが、価格高騰・不況・政府の規制によって「住宅は必ずしも投資価値があるとは限らない」という現実が人々に浸透し、特に都市部の若者が「購入より賃貸」を選び始めている点が注目されます。
これは単なる経済現象ではなく、結婚・家族観・人生設計といった深い社会文化的価値観の転換を映し出しています。

賃貸市場が過去10年で3倍に拡大したことは、消費者行動の変化とビジネスの適応を象徴しています。
住宅ローン返済に縛られるよりも、旅行や趣味にお金を使い自由な暮らしを楽しみたい——こうした価値観の変化に応える形で、投資会社は商業施設をリノベーションしてジム・共用スペース・24時間受付付きの賃貸住宅を提供し、人気を集めている。
これは単なる不動産の再利用にとどまらず、「コミュニティ型賃貸」「シェア志向の居住空間」といった新しい都市生活のモデルを提示しているといえます。

政府の融資抑制策は、過熱した不動産市場を冷やす狙いでしたが、結果として企業の資金繰りを悪化させ、販売不振を招きました。
その一方で、賃貸市場の拡大を後押しする政策も打ち出し、「住宅=投資」から「住宅=消費・生活基盤」へのシフトを促している。
つまり、中国の住宅政策は現在、過剰な投機を抑制しながらも新たな需要を掘り起こす「軟着陸」を模索していると解釈できます。

日本でも高度経済成長期以降、「持ち家こそ安定」という価値観が強くありました。
しかし若者の間では、同様に賃貸志向や「所有より利用」の価値観が広がっています。
中国の事例は、日本や他の国々にとっても「住宅を資産ではなく生活の自由度を高める選択肢として位置づける」方向性を示唆しており、都市計画や人口動態の変化を考える上で重要な参考点となります。

中国の住宅事情が単なる景気の問題ではなく、「生き方の選択」を映す鏡であることに気づかされました。
かつて「住宅は一生の夢」と言われた時代から、「住宅はライフスタイルの一部」に変わってきている。
この変化は、中国に限らずグローバルに進んでいる潮流であり、未来の住まい方を考える上で非常に示唆的です。

特に「住宅を持たないことで旅行や趣味に投資する」という若者の選択には、現代の価値観の柔軟さや、人生を多様に楽しもうとする前向きな意志を感じました。
これは、不動産不況というネガティブな状況の中から生まれた、ポジティブな文化的転換とも言えるでしょう。