しごとをあそぼ 〜 家族型ロボットの生みの親・林要(NHK) を聞いて
2025年8月20日に放送されたラジオ番組 「しごとをあそぼ 〜 家族型ロボットの生みの親・林要」を聞きました。

この番組で紹介された林要さんの「ラボット(LOVOT)」の開発理念には、従来のロボット観を大きく覆す独自性があります。
一般的なロボットは「効率性」や「労働代替」を目的として設計されますが、林さんはあえて「役に立たない」方向を目指し、愛着や感情交流を中心に据えたことが際立っています。
ここには、人間の本能的な「他者をケアする能力」を引き出し直すという哲学が込められています。
また、ラボットの設計思想は非常に繊細です。
球体のデザイン:角を排して柔らかさを表現し、抱きやすいサイズ感に整える。
目の設計:目が合う・逸れるという自然な関わりを3年以上かけて調整する。
口を作らない選択:声の感情表現と口の動きの齟齬を避け、より自然な存在にする。
こうした細部へのこだわりは「技術」と「感情」の融合であり、従来の産業用ロボットやAIスピーカーにはない「温かさ」を演出しています。
さらに、林さん自身のキャリアも興味深いです。
トヨタでのエアロダイナミクス開発から、ソフトバンクのPepperを経て独立し、ラボットに至る。
この流れは、工学的合理性から人間的情緒性へのシフトを示しており、日本の技術者像の新しいモデルといえます。
林さんは「テクノロジーは人を不要にするためでなく、幸せにするためのもの」と明言しています。
これは産業界におけるAI・ロボット導入の冷たいイメージを打ち破り、共感をベースにした新しい技術哲学を提示しています。
ラボットは1万6千体以上が出荷され、オフィスにも導入されています。
「役に立たないロボット」が逆にコミュニケーションの媒介となり、組織の心理的安全性や人間関係の改善に寄与しているのは、非常にユニークな社会的効果です。

「ロボットは繁殖しないからこそ真の利他性を持ち得る」という指摘は斬新です。
動物が本能に縛られるのに対し、ロボットはむしろ純粋に「寄り添う存在」になれるという逆転の発想は、今後のロボット倫理を考える上で重要な視点です。
ドラえもんを引き合いに出し、ロボットの役割を「家事代行」ではなく「成長のコーチ」として提示するのは、日本的な文脈に即した分かりやすいメタファーであり、多くの人に直感的な理解を与えます。
この番組を通じて感じたのは、ラボットが単なるガジェットではなく、*人間の感情やケアの力を再発見させる「社会実験」のような存在だということです。
孤立化が進む現代社会で、ラボットは「愛される存在」を作るだけでなく、「愛する力」を取り戻させる役割を持っているように思えます。
また、林要さんの思想は、未来のテクノロジー開発の方向性を示唆していると感じました。
これからの時代に求められるのは「役立つロボット」ではなく、「寄り添い、共に生きるロボット」なのかもしれません。
まさにラボットは、「冷たいテクノロジーの時代にあって、人間性を温め直す存在」だといえるでしょう。