マイあさ! くらしのテキスト「 戦後80年と防災」 を聞いて

2025年8月17日に放送されたラジオ番組 マイあさ! くらしのテキスト「 戦後80年と防災」 を聞きました。

  1. 戦後の生活再建と防災文化の原型
    戦後80年と防災。この二つは、人の命を守るという視点から深く結びついています。
    戦後の焼け野原からの復興期には、バラック住宅の建設や物資の配給体制が整えられました。
    この経験が、後の「仮設住宅」や「備蓄支援体制」の原型となったことは注目すべき点です。
    すなわち、戦後のサバイバル経験が防災文化の基盤を形づくったのです。

2. 大災害を契機とした制度と意識の進化
 伊勢湾台風(1959)、阪神淡路大震災(1995)、東日本大震災(2011)などを契機に、防災の制度・インフラが段階的に強化されてきました。
 以下の変化が特に重要です:
 ①法整備:災害対策基本法の制定や耐震基準の強化 
 ②インフラ整備:ハザードマップの普及 
 ③市民の意識改革:個人での備蓄の重要性の認識と行動
 特に阪神淡路大震災後には、物流の混乱により「最低3日分の備蓄」の必要性が広まり、さらに東日本大震災では「1週間以上の備蓄」が推奨されるようになりました。

3. 日常と一体化する防災:ローリングストック法の広まり
 非常時用の食品を日常の中で循環的に使う「家庭内流通備蓄(ローリングストック)」の考え方も紹介されました。
 これは、「非日常」ではなく「日常の中に防災を組み込む」という発想の転換です。
 防災を特別な行為にせず、生活の中に根付かせる工夫が見て取れます。

4. 記憶と教訓の継承:平和記念館と防災センター
 戦争と災害の共通点として、「命の尊さ」と「悲劇を繰り返さない」というメッセージを社会に伝え続けることの重要性が強調されます。
 記念碑や展示施設は、「風化させずに伝える」ための場であり、「学びの拠点」として機能しています。

5. 防災の包摂性:誰一人取り残さない支援へ
 子ども、女性、高齢者、障害者といった「災害弱者」への配慮も大きなテーマです。
 避難所のバリアフリー化や福祉避難所の整備は、「命の公平性」を実現するために不可欠です。


この番組は、防災の歴史を「命を守る文化の積み重ね」として捉え直す貴重な視点を提供してくれました。
ただの制度や技術の進歩ではなく、一つ一つの教訓が犠牲の上に成り立っているという重みを感じました。

特に印象深かったのは、災害に備えるという行為が、単なる「不安への備え」ではなく、平和への意思表示であるという考え方です。
戦争や災害という「人間の命を脅かす非日常」に対して、私たちが「日常を守る」という選択を続けてきたこと、それこそが戦後80年の歩みなのだと深く納得させられました。

さらに、「弱い立場の人々を守る」視点が強調されていたのも大切なポイントでした。
これからの防災は単なる防御の技術ではなく、共生と包摂を目指す社会的実践なのだと受け止めました。

今後の課題としては、記憶の風化への対抗と、多様な人々が生き延びられる社会づくりがあるでしょう。
テクノロジーや制度だけでなく、「自分ごと」として考える防災意識をいかに次世代に伝えていくかが問われています。