『マイあさ!』ワールドリポート「日本のマダガスカル農業人材育成プロジェクト」を聞いて

2025年8月13日に放送されたラジオ番組 『マイあさ!』ワールドリポート「日本のマダガスカル農業人材育成プロジェクト」を聞きました。

この番組は、日本とマダガスカルの間で進められている農業分野の人材育成・労働力交流プロジェクトについて描いています。
背景には、日本の農業の深刻な人手不足と、マダガスカルの農業人口の多さ・所得の低さという双方の課題があります。

(A) マダガスカルの現状
①国民の8割が農業従事者であり、稲作が中心。
②一人当たりの国民総所得は約500ドル(日本の約1/70)。
③若者人口が豊富で、アフリカ全体としても将来の労働力供給源として注目される地域。
④日本文化(特にアニメ)の影響で日本語学習者が多く、アフリカではエジプトに次いで2位の約2400人。

(B) プロジェクトの仕組み
①JICAが関与し、特定技能制度を活用してマダガスカル人を日本へ派遣。
②日本では先進的な農業技術(衛生管理・家畜の人工授精など)を学ぶ。
③受け入れ側の農場では「時間を守る」「真面目」といった評価を得ている。
④既に5人が鹿児島や北海道で就労、さらに7人が出発準備中。

(C) 国際的な意味合い
①2050年には世界人口の4人に1人がアフリカ人という予測から、長期的に見ても労働力交流の戦略的価値が高い。
②双方の課題解決(日本の労働力不足解消とマダガスカルの所得向上・技術習得)を狙う“Win-Win”モデル。

感想
①この取り組みは、単なる労働力輸入ではなく人材育成型の国際協力である点が評価できます。
 特に、マダガスカル側が技術を持ち帰ることで現地農業の近代化に寄与し、単なる出稼ぎ依存に陥らない可能性があります。
②スケールのカギは“帰還価値”です。
 個人にとって日本での就労が「より高い賃金+スキル可視化+帰還後の起業・職位上昇」に結びつくかが生命線です。
 ここが設計できれば、人材の循環が持続します。
③2050年の世界人口の約1/4がアフリカという見通しの中で、日本語教育の裾野があるマダガスカルとの協働は有効です。
 小さく始めて“質”で信頼を積む第一歩として意義が大きい。
④また、日本の農業は高齢化と後継者不足で危機的状況にありますが、このような制度は労働力だけでなく文化的な橋渡しの役割も果たします。
 日本語を既に学んでいる若者が対象であることは、現場での意思疎通のハードルを下げ、受け入れ先にもプラスです。

一方で、課題も想定されます。例えば、
①日本での労働環境や生活環境への適応支援。
②技術移転が現地で継続的な農業改善につながるためのフォローアップ。
③双方の文化・価値観の違いから生じる摩擦の軽減。

長期的に見ると、このような人材交流はアフリカの人口ボーナスと日本の労働力不足をつなぐ重要なモデルケースになり得ます。
今後は、単発的な派遣にとどまらず、農業教育・企業との連携・地域開発プログラム、現場の技能移転の設計と帰還後の受け皿づくりなどと結びつけることで、より持続的な成果が期待できるでしょう。