マイあさ! どうなる「トランプ関税」上智大学総合グローバル学部 前嶋和弘教授に聞く(NHK) を聞いて
2025年8月1日に放送されたラジオ番組 マイあさ! どうなる「トランプ関税」上智大学総合グローバル学部 前嶋和弘教授に聞く(NHK) を聞きました。

番組では、トランプ関税の根拠が法的に微妙であると指摘しています。
具体的には、1970年代の「国際緊急経済権限法」など、本来は敵国への対策として想定された法律を根拠に用いている点が不自然です。
本来、関税は議会の権限であるため、大統領による越権行為の可能性があります。
アメリカが関税率を「15%」に設定するにあたって、日本の選挙終了まで発動を待っていたフシがあるとの指摘があります。
これは外交カードとしての関税が、国内政治と密接に絡んでいることを示唆しています。
トランプ氏の打ち出した「25%」という関税率は、実際にははったり的な性質があり、実行力よりも交渉戦略の一環として見られます。
この点は、トランプ流の「ディール(取引)政治」の特徴をよく表しています。
日本がアメリカに投資している金額(5500億ドル)は膨大で、日本国内の雇用や産業基盤を犠牲にしている側面があります。
アメリカに雇用を生み出す代償として、日本国内の関連会社や中小企業が疲弊し、産業の空洞化が懸念されます。
番組では、アメリカがかつて保護主義をとった結果、大恐慌やファシズムの台頭を招いたことに触れています。
これは、保護主義が国際秩序を不安定化させる可能性を警告しており、非常に歴史的な視点からの冷静な分析です。
現在、アメリカの世界貿易シェアは13〜15%。アメリカ抜きの自由貿易ネットワーク構築は可能だが、安全保障の観点から日本にとっては簡単ではないと述べています。
この点は、経済と安全保障の二重構造を意識した発言です。

自由貿易は「アメリカが損をする」という国民感情が根強く、トランプ政権が終わっても保護主義の流れは続く可能性が高いとされます。
日本には、欧州・豪州と連携して自由主義経済の旗を掲げる責任があるとの提言で締めくくられます。
この番組は、一国の政策がいかに世界経済に連鎖的な影響を与えるかを多角的に示しており、非常に示唆に富んでいました。
トランプ政権の関税政策は「単なる貿易の問題」にとどまらず、法的正統性・地政学・歴史的教訓・産業構造・グローバルな自由主義体制の維持といった多方面にまたがる重要課題であることが浮かび上がります。
特に印象に残ったのは、「トランプ政権後も保護主義は続く」という視点です。
アメリカ社会内部にある「自由貿易は損」という不満が解消されない限り、誰が大統領であっても保護主義は繰り返されるのかもしれません。
日本は、その影響を最前線で受ける立場にありながらも、アメリカに依存せず自由貿易体制を守るための新しい外交戦略を模索することが求められています。
経済と安全保障をどうバランスさせるか、いまこそ冷静なビジョンと粘り強い対話力が必要とされていると感じました。