マイあさ! 「物言う株主」の議案 企業の成長戦略 (NHK) を聞いて

2025年7月30日に放送された ラジオ番組 マイあさ! 「物言う株主」の議案 企業の成長戦略 (NHK) を聞きました。

この番組は、企業経営と株主の関係における新たな動向、特に「アクティビスト(物言う株主)」の役割の変化に注目しています。

かつてのアクティビストは、企業が抱える現金や資産を短期的に株主に還元させて利益を得る「モノ言う株主」として知られていました。

しかし、現在はその手法が変化しています。

具体的には、短期的な利益確保から、3〜5年の中期的な企業価値向上を目指す、単なる資産要求ではなく、経営戦略や人事(取締役の入れ替え)にまで踏み込むといった、より経営に深く関与する姿勢が見られます。

このことは、「経営の実質的な監視役」としてアクティビストの役割が深化していることを意味します。

以前は「現金を溜め込むだけの優良企業」が標的でしたが、現在では、経営戦略に課題がある企業、成長余地のある企業などがターゲットになっています。

つまり、「伸びしろ」がある企業がアクティビストの関心を集めているということです。

日本政府によるコーポレートガバナンス改革も、アクティビストの活動を後押ししています。

経営者が「外圧」を言い訳にできなくなりつつあり、株主提案が以前より受け入れられやすくなっている。

これは、敵対的買収に対する防御が常に正当化される時代ではなくなったことも示唆しています。

日本では、数千万円規模の投資であっても株主提案が可能であり、欧米と比較して提案の制度的ハードルが低いのが特徴です。

これは、より多様な株主が経営に関与する余地を広げる可能性があります。

アクティビストが経営戦略に踏み込むことで、経営者はより明確な成長戦略を示す必要が生じています。

守りの姿勢ではなく、積極的な成長投資を行う責任が生まれるという構造が出来上がりつつあります。

この番組は、株主と経営者の関係性が「対立」から「緊張をともなった建設的な対話」へと変化しつつあることを教えてくれます。

従来、日本企業は「保守的」「内部留保に偏重」と言われてきましたが、アクティビストの登場と政府のガバナンス改革によって、変革の風が吹き始めているのは確かです。

企業の経営陣が「変化を起こす主体」であると社会に認識され、実際に行動に移すことが求められています。

一方で、アクティビストの関与が企業にとって必ずしも「善」とは限りません。

過度な株主主義が行き過ぎれば、短期志向に陥る危険もあるため、株主と経営者が健全な緊張関係を保ちながら、企業の持続的成長を目指すことが重要だと感じました。

最後に、「株主提案」が民主的に企業を動かす手段となり得ることは、これからの資本主義のあり方を問い直す一つの契機になるかもしれません。

経営の透明性、説明責任、そして社会との関係性を問い直す上で、アクティビストの存在は今後ますます注目されるでしょう。