バイオロギング研究 ラジオ深夜便「海の生き物が教えてくれること」(NHK)を聞いて

2025年7月20日に放送された  ラジオ深夜便「海の生き物が教えてくれること」(NHK)を聞きました。

海洋生物に小型のデータロガーを取り付け、動きや潜水深度、採餌行動を追跡する手法は、従来の観察や標識放流では把握できなかった「実際の生活の瞬間」を可視化しています。

特に、水中で電波が使えないため「記録回収型」が中心という技術的制約を克服する工夫が印象的です。

氷上では天敵が少なく警戒心が薄いため、2回捕獲して装置を回収できることがバイオロギング研究の進展に貢献しているという点は、環境条件と研究手法の密接な関係を物語っています。

授乳期の母アザラシが最初は全く餌を取らず、脂肪をエネルギー源として使い果たした後、300mもの深さに潜る行動が確認されています。

親子の潜水深度の記録がぴったり一致したという事実は、母親が常に子の安全や成長を最優先していることを示しており、「生態の記録」が同時に「母性愛の可視化」となっている点が感動的です。

産卵期のメスが餌を取らない一方、若い個体はクラゲを大量に食べ続ける様子がビデオで記録されており、生態的な役割分担が明確になっています。

この番組は、海洋生物の知られざる生活を「技術で可視化する試み」を通して、人間と自然の距離を一歩近づけるものでした。

特に印象に残ったのは、母アザラシが子育てのために行動を大きく変えるという記録です。

生き物の行動は単なる本能や習性ではなく、命をつなぐための「戦略」であり、そこには深い知恵が宿っていることを感じます。

広大な海を泳ぎながら、産卵のために小さな島に戻る能力は、地磁気を感じる力と関連している可能性が示唆されており、動物の「自然の羅針盤」が科学的に解明されつつあります。

クジラ、サメ、ペンギン、アザラシなど、多くの海洋生物が特定の地点で「何度も回転する行動」をとることが地磁気測定と関係しているのではないかという仮説は興味深いです。

これは人間の潜水艦でも用いられる測定技術と共通しており、自然と工学の間に不思議な相似が見られます。

また、地磁気を頼りに回遊するカメやサメの行動は、人間がまだ完全に理解していない「自然のナビゲーションシステム」を示しており、謎が多いがゆえに強い魅力を持っています。

こうした研究は、気候変動や環境破壊が進む現代において、私たちが海の生態系を守るためのヒントを与えてくれると感じました。