英雄たちの選択 「本田宗一郎 イノベーションで世界を目指せ!」を見て
2025年2月13日に放送されたテレビ番組 英雄たちの選択 「本田宗一郎 イノベーションで世界を目指せ!」を見ました。

この番組は、「イノベーションとは何か」「人を動かすリーダーシップとは何か」を問い直させる、非常に示唆に富む内容でした。
ピストンリングの製作に取り組んだ際、「高等小学校卒では歯が立たない」と自覚し、30歳で工業学校の聴講生になるという自己変革に踏み出した姿勢は、学歴に頼らない“実践的な学びの精神”を体現しています。
失敗を恐れず、学び直す勇気を持つ姿勢に、現代人も学ぶべき多くのヒントがあります。
今の時代、「学び直し(リスキリング)」が叫ばれていますが、本田はすでにそれを体現していたのです。
発明力や経営力に加えて、人を巻き込む力が重要だと番組は強調していました。
形式的な上下関係ではなく、「技術の前に平等という考え方は、現代のフラットな組織づくりに通じるものがあります。
トップダウンではなく、現場の声を生かす経営。それは、令和の時代にこそ求められるマネジメントの姿です。
本田が育った浜松の「やらまいか精神」=「やってみようじゃないか」という前向きな気風。これは、シリコンバレー的な文化の土壌とも重なります。
地域文化と個人の挑戦精神が響き合う例であり、イノベーションには「個人の資質」だけでなく、「地域の気風」も重要だと感じさせられました。
無線機の発電機を再利用し、妻の苦労に着目して開発したバイク。そこには「技術ではなく、人の困りごとが原点にある」という哲学が流れています。
単なる技術屋ではなく、「人の暮らしを見て考える」本田の姿勢が、まさに“生活に根ざしたイノベーション”の原型だと感じました。

レースを通して人材と技術を育てる。
そこでは、「失敗から学ぶ」「真似せず独自で勝つ」という本田の執念と独創性が炸裂します。
特に、マン島TTレースにおけるバルブの独自設計などは、技術は模倣ではなく、思想から生まれるという哲学の実例です。
単なる勝ち負けにとどまらず、「挑戦の場」としてレースを位置づける視点に、本田の教育者的な一面も感じました。
本田が一番好きだったのは「技術や機械」ではなく「人間」。
お客の困りごとを解決したいという情熱、人を育てることへの喜び、技術者同士のフェアな競争。
こうした「人間愛」こそが、ホンダという会社の原点だったと締めくくられていました。
本田宗一郎は「技術者」であると同時に、「教育者」「哲学者」「組織改革者」でもあった。
彼の人生は、イノベーションとは“技術だけ”ではなく、「人を信じて動かすこと」そのものであることを教えてくれます。
現代の企業人や若者にとっても、「どうすれば人の力を信じ、育て、巻き込みながら未来を創れるか」という本質的な問いを投げかける内容でした。