マイあさ! ワールドアイ「タイで日本食が大ブーム」を聞いて
2025年7月1日に放送されたラジオ番組 マイあさ! ワールドアイ「タイで日本食が大ブーム」を聞きました。

この番組は、単なる「日本食ブーム」にとどまらず、タイ社会における日本文化の深い浸透、さらには生活スタイルの一部として受け入れられていることを示しています。
タイでは以前から、日本のアニメ・漫画、家電、自動車といった製品を通じて、日本文化が親しまれてきました。
その延長線上に、日本食への関心があるのは自然な流れです。
特にコロナ禍で日本旅行ができなくなったことで、「現地で日本を楽しむ」ニーズが高まり、SNSを通じた情報拡散も拍車をかけました。
これはグローバル化とローカル文化の融合がSNS時代の特徴として強く表れた例だといえます。
興味深いのは、タイの人々が「辛い味」を好む一方で、日本食の「素材を活かしたシンプルな味」がむしろ「健康的で上品」として評価され、特に若者に受け入れられている点です。
これは「異文化を違和感なく受け入れる柔軟さ」と「新しいライフスタイルへの憧れ」を反映しています。
つまり、単なる「外国の料理」ではなく、「おしゃれな生き方」として日本食が認識されているのです。
日本食が高級レストランだけでなく、屋台や回転寿司など庶民的なレベルでも普及していることは、文化の「一部化」の証拠です。
1個50円の寿司から1万円のおまかせまで、幅広い価格帯があることで、特別な日にも日常の食事にも、日本食が選ばれるようになっています。

また、スーパーで日本の商品が手軽に買えることや、純喫茶風のカフェ、昭和レトロなパン屋など、食文化だけでなく「日本の空気感」そのものを楽しむ店が人気なのも特徴です。
クリームソーダや固めプリン、焼きそばパン、塩パンなど、日本人にとっては懐かしいものが、タイの若者には「新しくてかわいい」と映っているのも、文化の違いがもたらす面白さです。
塩パンや抹茶ブームに見られるように、SNSが新たな流行の起点となり、人々の嗜好や消費行動を変えています。
SNSで「シンプルだけど美味しい」「レトロでかわいい」と拡散されることで、文化の細部がブームになる現象は、日本国内でも見られますが、それが国境を越えてタイでも同様に起きている点が、現代的です。
この現象は、一時的な「流行」ではなく、タイ社会に根付く「生活文化」としての日本食の定着を感じさせます。
ただ食べ物として受け入れられるだけでなく、 「日本的な時間」「日本的な空間」「日本的なライフスタイル」 を体験したい、という気持ちが背景にあります。
これは経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや生活の質を重視する新しい世代の価値観を反映しているともいえます。
そして、こうした動きを見ると、改めて日本の食文化や生活文化の魅力を、日本人自身も再発見する必要があるのではないかと感じました。
海外で評価されることによって、自国の文化の価値に気づくこと。それが、文化交流のもう一つの大切な側面だと感じます。