先人たちの底力 知恵泉(ちえいず) 「 豊臣秀吉 土木力で未来を築け!」を見て
2025年3月4日に放送された 先人たちの底力 知恵泉(ちえいず) 「 豊臣秀吉 土木力で未来を築け!」(NHK) を見ました。

この番組は、豊臣秀吉の「土木」を通じたリーダーシップと戦略性を多角的に掘り下げた内容でした。
その中で特に印象的だったのは、「土木技術」が単なるインフラ整備ではなく、政治力・統率力・戦術・外交を兼ね備えた秀吉独自の「総合力」であったことです。
秀吉は「戦う前に勝てる状況を作る」ことを徹底していました。
三木城や備中高松城での付城・水攻めの事例にあるように、地形と人間の労働力を最大限に活用して「封鎖」や「持久戦」を仕掛け、無駄な流血を避けつつ目的を達成しました。
これは「地政学」と「ロジスティクス(兵站)」の応用であり、現代の経営戦略や都市開発に通じる視点とも言えます。
「割普請(わりぶしん)」という手法で作業を効率化し、評価に応じて褒美を与える。
これは現代でいう「プロジェクトマネジメント」や「インセンティブ制度」と一致します。
評価を明確にし、現場で汗をかく姿を自ら見せることで「信頼」と「やる気」を引き出した手法は、まさにトップリーダーの理想的な姿でしょう。
大阪城の天下普請では、かつての同僚たちを動員し、あえて労働を「共にする」ことで、服従ではなく「共感」や「誇り」に近い感情を呼び起こそうとしています。
しかもその巨大な城が、視覚的に「この人には敵わない」と思わせることに成功している。
建物というハードが、メッセージを伝えるソフトの役割を果たしている点が非常に興味深く、現代の「ブランディング戦略」とも通じます。

槍働きではなく、「土木」という誰も本気で目を向けていなかった分野に目をつけ、それを極めたことで出世の道を開いた秀吉。
この思想は、「競争の激しいレッドオーシャンではなく、自分の強みで市場を創る」という現代ビジネスのブルーオーシャン戦略の体現です。
豊臣秀吉という人物のすごさは、「物を作ること」自体にとどまらず、それを通じて「人を動かし」「心をつかみ」「未来を形にする」という一連の流れを戦略的に活用していた点にあります。
秀吉の行動は、単なる成り上がり者の偶然の成功ではなく、非常に合理的かつ創造的な発想と実行力の積み重ねであり、それが土木という「見えにくい力」を通じて見事に具現化されたものでした。
土木は「地味」で「裏方」と見られがちですが、秀吉はそれを「人の思いを束ね、未来をつくる力」として最大限に使いました。
この番組は、私たちに「今ある当たり前」の中に、自分には何ができるか?という大きな問いを投げかけているように感じました。