ラジオ番組 マイ Biz  「本を仕事にいかす『営業の科学』」を聞いて

2025年6月19日に放送されたラジオ番組 マイ Biz  「本を仕事にいかす『営業の科学』」を聞き

この「マイあさ! Biz 本を仕事にいかす『営業の科学』」の紹介には、営業という行為を“科学的に”捉えるという視点が貫かれており、非常に示唆に富む内容です。

この本が、営業1万人、お客様1万人、計2万人を対象とした大規模な定量調査をもとに、営業活動を科学的に分析している点がまず注目されます。

この本では、営業活動において、顧客が本音を言わないという現象を「仮面」と表現しています。

このことは対人関係における心理的なバリアを見事に言い当てています。

ここでは5種類の仮面が提示されました:

はぐらかしの仮面:曖昧な会話で真意を避ける

忙しさの仮面:応対拒否の方便

いきなりの仮面:短期的な提案依頼で本気度が不明

とにかく安くの仮面:価格しか見ていないふり

検討しますの仮面:断りのようで実は希望があるかもしれない

これらは、単なる“営業テクニック”としてではなく、人間関係における本音と建前の構造に迫るものです。

興味深いのは、「検討します」のうち、13.7%しか完全に望みがないわけではなく、残りの86.3%には可能性があるという統計的裏付けです。

つまり、「検討します」を断り文句と決めつけず、「なぜ決めきれないのか?」という背景を探る必要があります。

ここに、「定量調査に基づいた分析」の強みがあり、営業活動を主観や経験だけでなく、データに裏打ちされた理論として再構築している点が非常に現代的です。

営業の目的は売り込むことではなく、相手が本音を話せる環境を作ることにあるという逆転の発想。

これは心理学やカウンセリングにも通じる考え方であり、「傾聴」と「質問力」の重要性を改めて認識させられます。

この本の視点は営業に限らず、「親子関係」「職場での上司部下」「友人とのやりとり」などあらゆる人間関係に応用可能です。

人間は誰しも何らかの“仮面”を被って会話しているという前提に立てば、相手の言葉の裏にある真意に耳を澄ませる態度が重要になります。

この本の面白さは、「営業=押し売り」ではなく、科学的な観察と人間理解に基づく“対話術”であると再定義している点です。

特に「仮面」という比喩が見事で、言葉の表面だけを鵜呑みにするのではなく、その背後にある感情や立場、状況を読み取る姿勢が求められるという視点は、ビジネスだけでなく私たちの社会生活すべてに関わってきます。

そして何より、「相手の本音を引き出すには、自分がまず誠実であること」「聞き方や言葉の選び方で信頼が生まれる」という当たり前でありながら忘れがちな教訓を、データと実例で裏付けてくれることに、深い説得力を感じます。

『営業の科学』は、単なる営業ノウハウ本ではなく、人間関係の核心に触れる一冊です。

仮面の奥の「本音」にアクセスする力は、営業職だけでなく、あらゆる職種・立場の人にとっての武器になります。

営業活動をよりよくしたい人はもちろん、対人関係の改善を目指すすべての人にとって、読んで損はない本だといえるでしょう。