ラジオ番組 まんまる 「知るとより楽しめるアフタヌーンティー」を聞いて

2025年6月19日に放送されたラジオ番組 まんまる 「知るとより楽しめるアフタヌーンティー」(NHK)を聞きました。

この番組は、アフタヌーンティーという一見「おしゃれで可愛い」ブームの背後にある深い文化的背景を探る試みとして非常に興味深いものです。

ただの流行としてではなく、アフタヌーンティーを「総合芸術」「おもてなしの心」という切り口で紹介している点が特徴的です。

ばえよし。味よし。 雰囲気良し。三拍子揃ったエンターテイメント。

この表現は、Z世代を中心に流行しているアフタヌーンティーの魅力を端的に表現しています。

「ばえる」(=視覚的に美しい)ことが第一義に置かれており、SNS時代の文化を強く反映しています。

同時に、味や雰囲気も整っていることが、「自分へのご褒美」としての役割を果たしており、アフタヌーンティーが単なる飲食ではなく、自己肯定感を高める儀式のようなものになっていることが伺えます。

「イギリス人はティータイムの合間に仕事をする。」

イギリスのティー文化が、単なる飲み物の時間ではなく、生活のリズムや文化の軸であることを、ユーモアを交えて紹介しています。

ティータイムの種類の多さ(アーリーモーニング、ブレックファスト、イレブン、ミッドティー、アフタヌーンティー、アフターディナーティー)は、紅茶が「文化として根付いている」ことの証左であり、茶を介した生活様式=文化の中心であることが示されています。

アフタヌーンティーはイギリスにおける茶道という指摘は非常に深く、文化比較として優れています。

日本の茶道が「お茶を飲む行為」を超えて、道具、作法、禅、美意識などを統合した総合芸術であるように、アフタヌーンティーもまた、陶磁器・銀器・空間(インテリア・庭)に至るまで英国文化の凝縮体であるという視点です。

ここでは紅茶=文化の容れ物としての側面が強調され、単なる嗜好品ではなく、美意識や教養、歴史観が込められた行為であることが浮かび上がります。

食べる順番の違いに、文化的価値観の差が如実に現れています。

イギリスでは理にかなった順序(下から順番に(塩→甘))で味のバランスを整えていくことを重視しているのに対し、日本では「ビジュアル=インスタ映え」に重きが置かれ、順序や流儀が軽視されがちです。

これは、本質よりも表層的な美しさを優先する傾向が、現代日本の消費文化の一側面として読み取れます。

この番組を通して、アフタヌーンティーは決して「かわいいスイーツの写真を撮るイベント」にとどまらず、日常の中に文化的教養と精神性を取り込むための儀式的時間だということがよく伝わってきました。

また、「紅茶を楽しむ」という行為ひとつに、歴史・美術・空間設計・作法・心理的癒やしなどが複雑に絡み合っていることに感嘆します。

こうした多層的な文化の体験が、Z世代にも新たな形で「刺さっている」ことは、現代の若者の感性が実は非常に繊細で本質を求めていることの証でもあります。

一杯の紅茶に込められた文化の奥深さを知ることで、「自分へのご褒美」は単なる贅沢ではなく、日々を丁寧に生きることへの姿勢のあらわれになるのだと感じました。