ラジオ深夜便「旅の達人」 カジポン・マルコ・残月さん(NHK)を聞いて
2025年6月1日に放送されたラジオ深夜便「旅の達人」 カジポン・マルコ・残月さん(NHK)を聞きました。
この番組で、「墓マイラー」(著名人や歴史上の人物の墓を訪ね歩く人々)という言葉とカジポン・マルコ・残月さんを初めて知りました。

カジポンさんは、19歳の夏に、最もお世話になった人にお礼を伝えることにした。
一番はもちろん両親。
二番に浮かんだのがドストエフスキーということでした。
「人間の闇の部分を容赦なく描き出す。一方で、文章の行間にはそれでも人を信じていたいという思いが満ちている。」
これはドストエフスキーの特長を的確に捉えた表現です。
彼の小説では殺人や絶望、精神の混乱といった人間の極限状態が描かれますが、同時に「赦し」「愛」「信仰」といった人間性の光も描かれています。
カジポン氏はそうした“信じたい”という希望の光に心を打たれたのでしょう。
それで、ドストエフスキーのお墓に行く。
墓の土に手を当てた時、真っ先に来た感情は、本当に彼はいたんだという実感。
この世に生まれ、精一杯生きて、今は地面の下にいると実感。
全身に電気が走りました。芸術の雷です。ドンガシャビシャみたいな感じ。

ドストエフスキーの墓を訪れた時、架空の存在のように感じていた人物が、実在していたことに対するリアルな衝撃が描かれます。
それは単に驚きではなく、「生きた人間が、生をかけて芸術を遺した」という芸術的啓示です。
「芸術の雷」という表現は、まさに魂を揺さぶられた体験の比喩であり、芸術との出会いが人生に与えるインパクトの大きさを象徴しています。
カジポン氏が墓を出るとき、お世話になった人はドストエフスキー氏以外にもたくさんいることに気づく。
それから38年間に101か国、2500人以上の墓を参ってきている。
カジポン氏はまさに、実在と想像の間を旅する「魂の旅人」であり、芸術とは何か、人間とは何か、という問いに静かに真摯に見つめ直す“巡礼者”だと言えます。