ラジオ番組「生放送スペシャル 不登校・さて、どうしよう?」を聞いて(2)

(何がエネルギーになるか)
『①今勉強は特に必要じゃなければと言うので、今、料理とか犬の世話とかしてるんですけど、それがこの子にとってエネルギーになるのであれば、それが今必要なことかなと言う見方にだんだん変わっていったかなと思います。

何が彼のエネルギーになるのか、何を楽しんでいるのかっていう視点で考えることです。

あんまり学歴社会でもなくなってきているのかなというような感じもある。

 

②中三の夏ぐらいにここに行ってみたいかなというところが見つかって、月1回の体験入学体験授業を重ねていて、そのまま通信制高校に。

やっぱりこう合う、合わないがあったりしたのか、なんか途中で休学を経て、やめたりもしたんですけれども。

その後、本当に色々ありすぎて、話すと2時間ぐらいかかっちゃうそうなんですけど、現在、バイトしていて、こないだは旅行とかは行ったりね、その都度その都度、自分に合うものをやっぱり探りながら進んでいます。

 

③回り道かもしれないですけれども、やっぱりいろんな経験したっていうことが大事です。

休んでる間にいっぱい自分と向き合い。なので、その休む時間も凄く大事だったかなと思います。

休むということも選択肢だし、旅行に行くとか、趣味に没頭するとか、なんかそういうのもすべて進む道なんじゃないかなと思うので。

その子が今決めて、今はこれをやるっていうのを親も一緒に認めていくということも大事です。

 

 

④どうせ学校に行かないならと、平日に娘と映画に行ったり、コンサートに行ったり、北海道に旅行したりと、少しでも楽しいと思ってもらえる経験をさせてあげようと気持ちを私は切り替えました。

その後、通信制の高校に進学し、少し体を休めてこの4月から専門学校に通うまでになりました。これからも、娘を応援して行きたい。』

 

番組の中で、「子どもの今を尊重する」ことの大切さを伝えている部分を集めてみました。

①では、「勉強」よりも「その子にとってのエネルギー源」を優先するという発想の転換が印象的です。

料理や犬の世話など、社会的には小さなことに見えるかもしれませんが、その子にとっての「いま必要なこと」として真摯に受け止めている姿勢は、非常に深い理解と信頼を感じさせます。

そして、「学歴社会ではなくなってきている」という一言も、親の価値観の変化を象徴しており、時代の変化を感じさせる部分です。

②では、通信制高校に進んだ後の迷いや試行錯誤が描かれています。

途中で休学したり辞めたりといった経験を否定せず、今はバイトや旅行を楽しみながら進んでいるという語り口から、「止まっても、方向を変えてもいい」というメッセージが自然に伝わってきます。

何かを「続ける」ことではなく、「自分に合うものを探す」ことを大切にしている点が、とても現実的で共感を呼びます。

 

③では、休むことの価値が力強く語られています。

「休むことも進むこと」という見方は、不安に押しつぶされそうになる保護者にとって、大きな救いになる言葉でしょう。

そして、「今はこれをやると決めた子どもを、親も一緒に認めていくことが大事」という結論に、深い信頼と共同性が表れています。

 

 

④は、前向きな「気持ちの切り替え」によって、親子関係に新しい風が吹き込んだ例です。

映画、コンサート、旅行といった体験は、一見「勉強」とは無関係ですが、人生を豊かにする重要な要素であり、それを一緒に楽しむ親の姿勢が、子どもの未来をそっと後押ししています。

最終的に専門学校に通うようになったという事実は、「急がずに進んでも、きちんと未来にたどり着ける」という実例として、大きな励ましになります。

全体として、この文章は「焦らず、その子にとっての“今”を信じる」という親の姿勢が、いかに大切で力強いものであるかを教えてくれます。

その人なりのペースで人生を築いていけるという確信に満ちた内容でした。

 

(親だけで病院やスクールカウンセラーなどに行く)

『 ①親の立場からしますと驚いて慌ててしまうかもしれません。

どこかに相談しなくてはと考えることも多いでしょう。

子どもが病院やスクールカウンセラーに相談しに行きたくないというケースも多くあります。

そういう中で、お子さんが行きたがらなかったおじさん一人で相談に行ったという経験がありますか?

はい。スクールカウンセラーさんに、私はだいぶ支えていただきました。たくさん話を聞いていただいて。

だんだんの息子にも会ってみないかっていう感じのことも伝えてですね。

誰だったら会えるって聞くと、スクールカウンセラーさんなら会えるかもと。

それで月に1回来てもらって、お話というよりも、ひたすら遊んでくれた感じで、一時間の半分は息子の好きなことを一緒に楽しんで、あと半分で少し話を聞くという感じでした。

親も含めて3人で一緒にやっていました。

すごく息子が生き生きしてくるに伝わって、良かったですね。

なので本人が行きたくないって言うのを無理するよりも、親ひとりが繋がってたのはよかったかなと思います。

②あの不登校になったお子さんが、あのどうしても学校に病院に行きたくないっていうことは、やっぱりあると思うんですね。

これまでの話でもあったように、そういう時にやっぱり無理矢理連れてくるっていうのは、病院としては避けていただきたいなというふうに思っていますし、連れて来られただろうなってお子さんが来られた時、私たちはやっぱり無理矢理連れてこられてないかな、今日は?っていうことを1回確認したりもしてます。

そういう時に、例えば親御さんが私はあなたが朝起きられないのが心配だから、今日相談に行ってくるわとか、そういうことを率直に伝えて、親御さんだけで来てください。

医者は今できそうなことを伝えるので、今日そんなことを伝えられたよっていうことをお子さんに伝えていただくだけでもいいんじゃないかと思います。』

 

番組の中で、「無理に連れて行くことではなく、“つながりを持ち続ける”ことが大切だ」というメッセージが語られている部分を集めてみました。

①の語りでは、「子どもが相談に行きたがらないとき、親がまず動く」という行動が非常に示唆的です。

スクールカウンセラーに相談した親が、少しずつ信頼関係を築いていく過程で、やがて子ども自身も「この人なら会えるかも」と思うようになった。

このような「無理をさせない関わり」が、かえって子どもの心を開かせるという展開に、深く共感しました。

また、カウンセラーが“話す”より“遊ぶ”を中心にしていたというのも重要なポイントです。

子どもにとって安心して時間を共有できることが、まずは何より大切なのだということがよく分かります。

さらに、「親も含めた三人での時間」が、家族関係全体の温度を上げたという点も印象的です。

②の医療側からの語りは、非常に実践的で親身な助言に満ちています。

「無理矢理連れてこられたかどうかを確認する」「親だけの相談も歓迎する」といった姿勢は、子どもの主体性を何よりも尊重していることが伝わります。

特に、「今日はあなたのことが心配だから相談に行ってくるね」と親が率直に伝えるだけでも良い、という助言は、保護者にとって大きな安心につながると思います。

「必ず一緒に行かなければいけない」という思い込みを解き、親自身が孤立せずにサポートを受けられることの大切さを、やさしく教えてくれています。

全体を通して、共通しているのは「焦らず、無理せず、信頼を少しずつ築いていくこと」の大切さです。

そして、親だけでもまず一歩動いてみることが、子どもにとっても、家庭にとっても大きな意味を持つということ。

支援は「同行」ではなく「関係をつなぐこと」から始まる――その真実が、静かにしかし力強く伝わってくる内容でした。

 

(親の会)
『親の会に行こうって、その当時思ってなかったんです。そこに私が求めている答えはきっとないだろうと思ってたんですけど、ある時、経験した親御さんと話した時に、すごく伝わりやすかったというか、安心できたんですね。

自分ひとりじゃないということもあって。

で、私が探し求めた情報というか、あの進路の情報、病院の情報とかも、あの親御さんがちゃんと持っていたというのがあって。

経験してる親御さんと話す事が安心と情報の両方得られたかなと思います。

ちょっと先に行くお母さんたちが元気になって行く姿とか、お子さんが元気な姿とかも見せてもらえるので、よかったです。

オンラインの親の会もあります。

ちょっと参加して聞くだけでもいい。

そしたら話したくなったりすることもやっぱあります。

やっぱり相性があると思うので、いろいろ自分の合う場所に行って、なんか違ったなと思ったら、違う場所に行ってみるのもいいかなと思います。』

 

 

番組の中で、親の会に対する最初の不安や懐疑心から始まり、実際に参加してみたことで得られた安心感や情報、そして「仲間がいる」という感覚の大切さが、率直かつ温かい言葉で語られています。

とても等身大で、多くの保護者が共感できる内容だと感じました。

冒頭で「親の会に行こうって、その当時思ってなかった」という本音が述べられており、「どうせ答えなんてない」「自分には合わないかもしれない」という気持ちは、悩んでいる最中の親御さんにはよくある自然な反応だと思います。

それだけに、実際に経験者の話を聞いたことで「安心できた」「情報も得られた」と感じた変化が、とてもリアルで説得力があります。

「ちょっと先に行くお母さんたちが元気になっていく姿を見せてもらえる」という部分は特に印象的です。

それは直接のアドバイス以上に、「自分たちもいずれそこに行けるかもしれない」という希望のイメージを持たせてくれるものです。

具体的な情報(進路・医療)とともに、感情面でも支えられたことが伝わってきます。

また、「オンラインの親の会」や「合わなければ他を探せばいい」という柔軟な視点も、今の時代に合った提案であり、非常に実用的です。

支援の場が“正解か不正解か”ではなく、“合うか合わないか”という視点で語られていることが、読んでいる側の気持ちを楽にしてくれます。

 

(母子分離不安)

『①母子分離不安についてですが、私の不登校と関連しているかがちょっと不明ですけど、小さい時、本当に五歳とか一桁代の時に1回キャンプ初めてキャンプに行って、親から離れてパニックを起こして、夜中雨の中キャンプ場一人で抜け出して連れ戻されるっていう経験したことが実はあったんです。

そこから私、親から離れてどこかに泊まるっていうことができなくなっていました。

仕事を始めてしばらくしてからもずっと、20歳ぐらいまでは泊まりの仕事というのはNGにしていたんです。

それがもしかしたら、今考えると母子分離不安って名前が付くのかもしれないなと思っていて。

何を考えていたかというと、親と離れているその世界で一番好きで失いたくない存在と、離れているときに火事とか地震とか、そういったものが起きたら、もう一生会えなくなってしまうかも知れないという想像力の不安だったんですよね。

そこから仕事を通じて徐々に少しずつ慣らしていって、親離れっていうのができるようになったって経緯がありましたね。

 

②母子分離不安のお子さんですと、なかなかこう親御さんから離れられなかったりするわけですけれども、やっぱり本人を取り巻く環境って凄く大事で、まずご本人にとって安全もしくは安心って思えるような環境を整えていくことですごく大事なんですね。

このお子さんの場合ですと、こうやって放課後デイに週2回通ったりしているわけですけれども、こうやって離れられていることをポジティブ、フィードバックしていることって、すごく大切なんですね。

お子さん自身がその放課後デイの中で楽しいことを過ごせたよって言うことを聞いたりする事で、こうやって離れられて私良かったんだなってお子さんが感じられる、そういうことがすごく大事になってきます。

ちょっとずつご本人にとって離れられるラインっていうのを探していって、まあそうやって離れていてくれて、一人で遊んでくれたから、仕事ができたよっていうことを伝えること、つまり本人が頑張って離れてくれたことで、親にもいいことあったし、お子さんにとってもいいことあったよっていうことを伝えること、自分の頑張りがちゃんと報われているんだってお子さんに感じられることが、すごく大事です。』

 

番組の中で、「母子分離不安」が語られている部分を集めてみました。

①では、ご本人の語りがとても印象的です。

五歳のときのキャンプ体験――夜中に一人で雨の中を抜け出してしまったというエピソードは、その恐怖や混乱のリアルさが生々しく伝わってきて、読む側の胸にも迫ります。

そして、「一番大切な人と離れているときに、もしものことが起きたら」という不安。

それは決して子どもじみたものではなく、大切な存在への強い愛情と想像力ゆえの恐れであり、それが「母子分離不安」という言葉で整理されることで、ようやく理解される感情だったのだと気づかされます。

また、「少しずつ仕事を通じて慣れていった」「自分で“親離れ”をしていった」という言葉には、決して一足飛びにはできなかった苦労と、その中で育まれた強さが感じられます。

この体験は、今まさに不安を抱えている人にとって大きな希望になるはずです。

②では、支援者の視点から、母子分離不安の子どもをどうサポートしていくかが丁寧に語られています。

特に大切なのは、「安心できる環境を整えること」「少しずつ成功体験を積み重ねること」「その努力をきちんと認めて、言葉でフィードバックすること」です。

「今日一人で遊んでくれたから、ママ仕事ができたよ」といった親の言葉が、どれほど子どもの自信になるか――このような声かけは、支援というよりも“信頼”の形だと感じます。

本人の努力を小さな一歩として積み上げていく支援の大切さが、具体的で現実的な形で描かれています。

全体として、この文章は「不安を否定せず、ゆっくりと認め、受け入れていくこと」の大切さを優しく教えてくれます。

母子分離不安というテーマに対して、決して「克服」や「矯正」といった言葉ではなく、「寄り添い」と「信頼」の力で向き合っていく姿勢に、深い共感と安心を感じました。